持ち家者であるが、実は、タイヤの置き場もままならないのである。 二世帯住宅の2、3階は我が家だが、1階は義父母の領地だからである。 最初のうちは下の庭の物置の中に入れさせてもらっていたけれど、 私のも妻のも、タイヤのサイズがだんだんと大きくなって、入らなくなった。 それで一時期、妻は冬用のタイヤを断念して、電車併用となり、 私はオールシーズンタイヤを試したり、滑り止め装着などでしのいだりしていた。 そんな期間のために、ますますタイヤの置き場はなくなってしまった。 ある時、妻が勝手にタイヤストッカーを買って裏の庭に置こうとしたら、 案の定、義父に叱られ、返品を命じられた。 自慢の庭に、美観を損ねるようなものを置くでない、というわけである。 (私は同居してから叱られたことはないけれど、妻は叱られるのである。 娘の夫にはなかなか遠慮するけれど、自分の娘には言うべきことは言う。 世の、嫁vs姑関係とは正反対である。婿養子という形でなく、別世帯で、 妻の親と同居するのが1番平和なのである)
さて、いよいよまたスタッドレスタイヤに復帰しようとして、最初の置き場は部室だった。 でも、何年もそうしているわけにはいかないし、妻もスタッドレスにしたがった。 近所に月1万円程度で借りられる部屋でもあれば、いろいろ収納できて、 第2仕事部屋にもなって便利なのだが、そんなものは、ない。 近所の貸し駐車場にガレージ付きのがあったのだが、そのころはもう消滅していた。 そうして、HPで見つけたのが、「押し入れ産業」という 柳津の運送会社のコンテナ賃貸システムである。 年額8万数千円を納めて、これで丸3年利用させてもらっている。 タイヤのために、タイヤを含め、ものすごい投資をしていることになるけれど、 冬用タイヤというのは仕事上の保険のようなものなので、やむを得ない。 コンテナは、1番小さいコンテナの料金で2番目のものを貸してもらえたので、 タイヤを8つ入れてもガランガランである。 まだいくらでも入るのだが、考えてみても、他にそう入れるものもなく、 邪魔だといって廃品一時収納所なんて考えていると解約したとき困るので、 申し訳程度に、段ボール箱が2つばかり入れてあるだけだ。 もったいないけれど、タイヤの置き場さえあれば、という 切羽詰まった要求によるものなので、それで良しとしている。
毎年春休みのこの時期と、12月の試験期間中に、タイヤを引き取りに行き、 2台のタイヤを交換して、収納に行くわけである。 そこへ行くには、岐阜の街の中を通って行く方法もあるけれど、 長良川の堤防沿いにず〜〜っと墨俣まで下って行くルートもある。 もちろん、後者は信号も少なく、景色もいいので、こちらを愛用している。 岐阜から津島に行く場合でも、この道を通ると、津島へ入る大橋まで、 信号が3つか4つしかないという、驚異のルートなのである。
長良川は木曽川ほど河岸が加工してないので、川の眺めがよい。 それも、このルートの心休まる要素である。 道中に桜が散見できるばかりでなく、墨俣の桜が壮観である。 ここの交差点がかなり長い渋滞になるのだが、春はそれが苦にならない。 墨俣一夜城址から橋までの間、ずっとその壮観な眺めを楽しめるからである。
ところが、きょうはもうその桜も、「わろし」の域に入っていた。 清少納言が炭火について「白き灰がちになりてわろし」と書いたのと似た思いである。 花はかなり散ったとはいえ、まだ大半最後の命をとどめている。 けれどもこのころになると、取り残された雄しべの海老茶色が強調され始め、 葉の緑も点描画の中に混じってきて、美しくないのである。 墨俣の桜も、まだまだ壮観ではあるが、妖艶な美は失っていたのである。 それは、運送屋から職場に向かう途中での笠松競馬場周辺でも同じだった。 昨日ときょうが暖かすぎた、いや、きょうは6月並みに暑いほどだった、 その異常な気候が、桜の命を極度に縮めてしまったのである。
その代わり目を引いたのが、長良川堤の壁面の、黄色い絨毯である。 実に鮮やかな黄色い絨毯である。 「いちめんの菜の花 いちめんの・・・」なんて詩も思い出す。 でも、、、菜の、、花、、? 去年の春も、一昨年の春も、こんな絨毯が広がっていた印象がない。 この花はいったい何だろう、、、??(私は植物にはまったく疎い)。 四谷の桜に興を添えていたレンギョウとも違うし、 鼻炎に悩まされていたころ忌まわしかったセイタカアワダチソウでもない。 墨俣での20分近い渋滞の間、助手席から手を伸ばせば摘み取れるくらいの距離で、 じっくり観察した結果、これはどう見ても菜の花ではないか、と判断した。 花のつき具合、茎から短いヒョロッ、ヒョロッがでているようす、、、 どう見てもこれは、小学校の時に観察した菜の花の姿に似ている。 菜の花?? 菜の花の通常の盛りって、もうちょっと後じゃなかったっけ? 異常とも言いたくなるほどの暖春が、桜だけでなく、菜の花の運命まで変えたらしい。 それにしても、は〜〜〜っと感動できる黄色い風景だった。。。
明日の朝もこの光景を楽しめるわけである。 きょう交換したタイヤを収納に行かなければならないから。。。 こういう眺めも、もったいない出費の、思いがけない〈おまけ〉なのである。
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