TENSEI塵語

2002年11月22日(金) 復帰への第1歩

Sの話を終わりにできるかどうかは、月曜の朝にかかっている。
きょう彼は、3つの授業のうちの2つに出た。3週間半ぶりである。

朝学校に行くと、Sは朝1時間分の年休を取っている。
それは、本来ならそう悪い話ではない。
きょうのもともとの時間割は、2、5、6時間目にあるので、
2時間目からはしっかりと授業をやるぞ、という決意のようにも見える。
ところが困ったことに、時間割変更で、1、2、5時間目となっているのである。
やれ困った、1時間目の授業をどうしようか。。。
昨日教頭にSの時間割を変更されたままにメモして渡しておいたのに、
ちゃんとその旨伝えてくれなかったのかしらん、と思って教頭に問い質した。
「奥さんからの電話で、また朝から吐いてるらしい」
溜息つかざるをえない。
でも、2時間目に来るそうだから、それだけでも吉報なので、
1時間目をどう凌ぐか悩んでいると、電話が鳴って教務主任が出た。
「教頭ですか? ひとりは1日出張で、もうひとりは今出張に出ましたよ」
で、代わりに電話を受けたようである。たぶんSである。
「そうですか、、、困りましたね、、、どうしたらいいんでしょう、、?」
などと煮え切らない応対をしている。
結局、私に助けを求めてきた。

「2時間目から行くつもりだったんですけど、体調がすごく悪いんで、
 どうしようかと思いまして、、、」
Sがあまりにも気弱な声で訴えるのを聞いてしまうと、つい怯んでしまうけれど、
ここはもう一歩もゆずれない場面である。
きょうの2時間目の授業をやらないと、試験前に1時間しかなくなってしまうことを
説明して、きょう休んでしまうと来週も試験も大変なことになることを説明した。
それでもSが同じことをくり返すので、怒鳴りたい気持ちをぐっと抑えて、
教卓に座って自習させながら時々説明してあげる程度でいいから来てください、
とお願いすると、ようやく、わかりました、という返事が返ってきた。

1時間目の自習監督だけ手配して、授業に行き、途中で生徒に課題を与えて、
Sが来ているか確認のために職員室に行った。
「事務室には、1日休みって書いてあったよ」とある先生が私に言った。
えっっ??どういうことだ?? と、事務室に確認に行く途中の階段で、
力なく階段を上ってくるSとすれちがった。
「やー、ご苦労さんでーす」と陽気を装って声をかけると、
彼はお詫びを言いながら、今にも泣き出しそうな顔である。
事務室で確認すると、それはさっきの電話の時、1日休むと言ったので、
それなら教頭にも話すようにと職員室に電話を回し、教務主任がその電話を取って、
それが私のところにも回ってきたのだが、事務室では結論を知らずにいたので、
彼の申し出通り、年休1日と記したのだそうである。

職員室の喫煙室に戻り、Sの後ろ姿を見ていると、ちょっと不憫にも思われてくる。
彼の席に行って、
「ごめんねー。時にはやっぱり生徒中心で考えなきゃいけないときもあるから、
 無理させてしまって、、、」
「時には」じゃないやい、と自身に文句言いつつも、
彼の不満はちょっとでも排除しなきゃいけないと思って、声をかける。
2時間目の開始時間が来て、彼は職員室を出て行った。
少し遅れて、私も職員室を出て、後をつけながら生徒指導室から彼の様子を見た。
今、授業する教室の前だ、、戸を開けた、、、入った!! 万歳の瞬間である。
3週間以上ものブランクのあとで教室に入る苦渋の思いは、
経験はないけれども想像に難くないので、見ている方も緊張の一瞬だったのである。

もしも彼がホントに精神的に病んでいるとしたら、その治療は、
しばらく仕事を離れて専門的な治療に専念するか、
逃げないで飛びこんで行くか、どちらかしかないのである。
安易に染まって逃げ続けていたら、病状は悪化するばかりである。
彼はきょう復帰への第1歩を踏み出したけれど、本当の関門は月曜の朝である。


 < 過去  INDEX  未来 >


TENSEI [MAIL]