一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
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その34
チーフが黙って下を見ていた・・・すると、女将さんが喋りだした。
「私はこの人と、所帯をもつ、つもりです、親分が心配するようなことは決して・・・。」
オルテガさんがカウンターから身を乗り出して二人に、
「あんたらが所帯を持とうが夫婦になろうが、しったこっちゃないんだよ!」
「尼崎で商売する気なら、ちゃんと筋道を通さなきゃいけねってことだよ!」
「チーフ!わかるだろう・・・あんたも一人で一人前のチーフになったんじゃねーだろ!」
「うぬぼれるんじゃないよ!どんな名医だって患者がいるからだろ!」
「どんな腕のいい職人でも、お客さんが来てくれるからだろ!店があるからだろ!」
「料理の事はわからんが、感謝のない料理は、そんな店は、長続きしねえよ!」
オルテガさんは、カウンターにポンと、お金を置いて、そのまま店を出ていった・・・。
翌朝・・・私がいつものように、器をさげに回ってたら、ちょうど昨夜の、女将さんの
店に来たとき、ガラガラと店の戸が開いた、チーフと女将さんが出てきた・・・。
二人は、手に大きなバッグを持って、どこかに行くみたいだった・・・。
チーフが私を見つけ、呼び止めた、
「お願いがあるんだけど・・・」
またこの次
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