一平さんの隠し味
尼崎の「グリル一平」のマスターが、カウンター越しに語ります。
目 次|過 去|未 来
その43
車椅子のお父さんは、ベンチプレスで横になってる大将の傍で、
重量を上げてる息子さんに・・・
「まだ日にちはあるから、慌てて筋肉を壊すなよ!」
「当日になって、筋肉が硬くなって目ばえがしなくて入賞できなくなった 連中をたくさん見てきた」
「最初から一枚一枚、筋肉を着けていこう!」
二人の間には凄い空気が流れていました。
「あのー、す すみません!赤い焼きそばの代金を・・・」、すると、
お父さんが「ああ!すまん、すまん!いくらや!忘れとったがな・・・」
車椅子にかかってたバッグから、財布を抜き出しながら、私に・・・。
「出来るだけ続けなあかんで、筋肉は少しずつ着けるんやで!」
「筋肉には必ず裏地があって、その裏地をキッチリと着けないと、何年 やっても、すぐに休むと筋肉が消えてしまうからな」
「華やかな仕事ほど裏地ってゆうのが大切なんやで!」 「君が今、やってる配達だって裏地なんや、いつか自分の店を持ったとき、今の配達が きっと生きてくるよ!」
「どんな立派な着物でも、かくれた裏地が、しっかり縫ってないと、着崩れしてしまうし」 「裏地の糸がきっちり縫われてたら、上から着物の帯をゆっくり締めても着崩れしない!」
「人はみな、裏方のお陰で表の人がいきてくる!裏方の感謝を忘れたらあかんで!」
ベンチプレスの大将が・・・「おやじ!早よ食べな冷えるで!」
いまでも、あのお父さんの言葉はよく憶えています、20才の時のあの気持ち
を忘れずに大切に生きてゆかねば、と、思う今日この頃です・・・。
またこの次
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