脱出 - 2001年06月06日(水) 車をアテられた。スーパーの駐車場で。久しぶりに買い込んだ食料品の袋を両手にいっぱいぶら下げて、ふうふう言いながら車に戻ったら、助手席側のドアがめいっぱいへこんでた。あーもう、なんてことなの。中古だけど一ヶ月前に買い換えたばっかりなのに。なんでこう悪いことばっかりなのよ。 怒りが悲しみに変わって、あの人に向けられちゃった。 「悪いことばっか。やなことばっか。もういいことなんかなんにもない。あなたはひとつだって約束なんか守ってくれないし。どんなに待ったって、どんなに我慢したって、あたしの気持ちなんか分かってくれない。言ったって、ちゃんと分かってくれてない。あたし悲しいばっかり。ずーっと辛いばっかり。あたしが大事なのは、あなたにいろんなことしてあげてるからだ。だからずっと約束引き延ばして、引き止めておきたいんだ。自分のことばっか考えてる。あたしの気持ち利用してる。離れてるから便利だもんね。あたしバカだよ。一生懸命助けてあげても応援してあげても、あなたがもっと成功して一緒に喜ぶのはあたしじゃないのに。あなたはあたしと一緒に喜んでくれないのに。こんなとこ、もう引っ越す。なんにもいいことないもん。それでもう、あなたに行き先教えない。」 もうすぐ電話がかかってくるから、そしたらそう言おう。ボコボコにへこんじゃった、自分みたいな車をぶっ飛ばしながら、考えた。 約束の時間が2時間過ぎても3時間過ぎても、かかってこない。なんで? 彼女と一緒なの? 「ばか。うそつき。きらい。もうぜったいしんじないから。だいきらい。だいきらい。だいきらい。だいきらい。だいきらい。もういい。どうせあなたはけっこんしちゃうんだから。してあげたこと、かえして。かえしてよ。かえせ。いますぐかえせ。わたしのことりようしないで。わたしのきもちりようしないでよ。」 メールを書いて、30秒くらいためらってから送信ボタンを押した。 「頭がんがんして、・・・苦しい。仕事休んだ・・・。」 夜中の1時過ぎに電話がかかってきた。日本はお昼。 「電話したんだよ。いなかった。」 買い物に行ってた時だ。 「大丈夫? お薬飲んだの? あたしが送ってあげたやつ。あれ、すっごく効くから。」 「赤い方? 青い方?」 「青い方。ぐっすり眠れるから。」 「なんか食べたほうがいい?」 「食欲あるの? 少し食べてから飲んだ方がいい。」 「うん。食欲はある。なんか食べて薬飲むよ。メルモちゃんみたいだなあ、赤いのと青いのとって。大きくなったらどうしよう?」 苦しいくせにまたバカなこと言ってる。 「あさっての朝、電話していい? 明日は朝早いから。それまでに元気になっとくよ。ごめんね。待ってただろ? また待たせちゃったよ。ごめんね。」 「あのね、メール送ったの。読まないで。ひどいこと書いちゃった。」 「また早とちりして、バカとかうそつきとか書いたんだろ。」 なんで信じないの? きみのこと大事だって言ってるだろ? あのね、急用が出来たりして電話かけられないこともあるんだから。だけどあとから絶対かけるから。早とちりしていたずらメールみたいなの、もう送らないの。わかった? 誰かが邪魔したの? 助けてくれたの? わかんないよ。でもなんか少し、すっきりした。それとも安心しただけかな。もう強くなろ。いつか言ってやるんだ。考えてたこと。だって、あれだってほんとの気持ちだもの。明日は元気が出そう。ごはんいっぱい食べて、お出かけして、イジイジからも脱出する。・・・とりあえず。 -
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