何かが変わる - 2001年06月11日(月) おととい、夫から電話があった。 「元気?」 「元気だよ。あなたは?」 「うん、まあ。ずっと忙しい。ネコたちは?」 「チビたちも元気だよ。」 なんだかお互いに、切り出したい言葉を呑み込んでる。 わかってる。彼が言いたいこと。 「昨日結婚記念日だったんだよ。覚えてた?」 「うん。思い出して電話したんだ。」 それでおしまい。言い終えて、義務を果たしたように、儀式を済ませたかのように、夫もわたしもほっとしてる。 結婚記念日って、何するんだっけ? 何してたっけ? いくつ目からか、カレンダーを気にしながら、夫の様子を伺いながら、やるせなさを隠して素通りする特別な日になった。初めてその日をお祝いしなかった年は、悲しくてひとりで泣いた。「今日、結婚記念日だよ」って夫に言ったような気はする。でも彼がなんて答えたか覚えてない。いつから、どうして、そんなふうになっちゃったんだろう。 今年は、一緒にさえ暮らしてない。 「どうしてるの?」。夫が聞いた。 堰を切ったみたいに、わたしは夢中で話し出した。車をあてられちゃったこと。相変わらずぼうっと、何もせずに過ごしてること。まだ仕事探しもきちんと始めてないこと。先週ふたつの病院に履歴書をファクスしたら、インターン終了の年を2000年って打ってたことに送ってから気がついたこと。ゆうべ MTV の2001年映画賞の番組を最後まで見たこと。そのあとまた予告編が始まったと思ったら、またそっくりそのまま番組が最初から最後まであとに続いて、結局2回全部見ちゃったこと。 理由はわかってる。週末の辛さを紛らわせたかったから。話していて、嬉しかった。嬉しいからいっぱい話した。どんどん言葉が出てきた。安心してた。どんどん気持ちが落ち着いていった。なんであんなに安心して話してたんだろう。 あの人へのメールの最後に書いた。 「今日はうれしいことがあったよ。ディーから仲直りのメールが来たんだ。一ヶ月くらい前にちょっとケンカしたの。『もう怒ってないよ』って。それからアノヒトから電話がありました。」 「うれしいこと」が、ディーからのメールとアノヒトから電話の両方に取れるようなあいまいさは、わたしの気持ちそのままだった。 意地悪したんじゃなくて、ただ報告したかった。あの人の気持ちを確かめるためじゃない。自分の気持ちを確認するため。・・・やっぱり、あの人の反応も知りたかったのかもしれない。送信してから少しだけ後悔した。聞かれると答えるけど、自分から夫のことを言ったことなんかなかったから。 あの人から届いたメールを開ける。不安になる。何か心配したかもしれない。 「仕事終わって、今帰宅したとこ。これから今日トイレで思いついた曲を忘れないうちに作りますよぉ。」 なんだ、別に気にしてないんだ。そんなことグジグジ考えてるヒマなんかないものね。頑張って、素敵な曲作ってね。聴きたいよ、早く。ちゃんと今まで通り、一番最初にわたしに聴かせて。それが出来なくなるまでは、ずっとだよ。 あの人が夫のことを気にしてなくて、ほっとする。そんなこと、今までにあったっけ? そういえば、このあいだ夫のところに戻るのが一番いいのかもしれないって話したときも、自分の冷静さに驚いた。話し終わって、気持ちが軽くなりさえした。 ー近い未来に、何が起こるの? わたしの中の何かが変わる? -
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