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チャイニーズ・ドレス - 2001年07月27日(金) あれからまた3時間半、ずっと電話してた。 殆ど毎日電話くれるのに、それでも話は尽きない。いくらでもいくらでも、話したいことがある。どこまでもおしゃべりが続く。 それなのに、最後の2時間はめちゃくちゃになってしまった。 わたしがまた言っちゃいけないことを言い出してしまったから。 あの人の彼女のこと。 あの人が聞いててくれるのをいいことに、止まらなくなって、止まらなくなって、イヤミまで口をついて出る。とうとう「しょうがないじゃん」なんて言われてしまって、わーわー泣いた。 「イヤ、イヤ、イヤ」「お願い、お願い、お願い」。 こんなに思い合ってても、どんなに優しくしてくれても、大事に思ってくれても、あの人の彼女への愛が痛い。ずっとずっと痛い。 どうしても消すことができない痛みを抑えられなくて、わけのわからない言葉になって嗚咽と一緒に口から出る。しょうがないよ、わかってるよ。しょうがないの。初めからしょうがないの。でもなんで「しょうがない」なの? しょうがない。しょうがない。しょうがない。わかってるけど、聞きたくなかった。 泣きながら言葉にならない気持ちを叫び続けるわたしは、とても正気には聞こえなかったと思う。気が触れたみたいなわたしが怖かったんだ。あの人は言葉を失くして、もう何も答えてくれない。名前を呼んでも答えてくれない。呼び続けると「名前呼んでるだけじゃわからない」って言った。 「なんでそんなふうになるの? わかってるよ、きみが辛いのは。でもこれ以上どうしたらいいのかわからないよ。僕はずっときみを大事にして、ずっと優しくしてるのに。」 「優しくしてくれるのはわたしがかわいそうだから?」 「そんなふうに思ってない。」 「同情してるの? わたしに。」 「違う。」 大きなため息が聞こえる。 僕はきみが大好きで、すごく大事で、だからこの関係ずっと大切にしてきたし、ずっと大切にしようと思ってた。嬉しいことがあったときも落ち込んだときも、一番話を聞いて欲しいのはきみだった。きみが苦しいときには僕が助けてあげたいって思ってきた。だけど、だけどきみが辛くておかしくなって、僕にそれをどうしてあげることも出来ないのなら・・・、 「もうこんな関係無理だよ。もうやめたほうがいいのかもしれない」。 もうおしまいにしようって何回も思ったのはわたし。そう言ったことも何度かある。でもあの人はその度にイヤだって言った。あの人がやめるなんて言ったのは初めてだった。 なんでこんなことになったんだろう。さっきまで楽しかったのに。出来ない? もう普通に話が出来ない? 今までみたいにやってけない? ーあの人が言った。 答えることが出来なかった。愛されてるなんて、大きな勘違いだったのかもしれない。それでも失いたくない。失いたくなければ、もうずっと痛みを抱えているしかない。「好きなの」。それしか言葉が出なかった。「わかってるよ、そんなこと」ってあの人は笑った。笑った意味がわからなかった。 どうやって電話を切ったのか覚えてない。朝の4時半になってた。 「近所にチャイニーズ・ドレスの店があるんだよ。前を通るといつも、きみに着せたいって思う。」 「チャイニーズ・ドレスが好きなの?」 「いいじゃん、あれ。きみは絶対似合うよ。会いに行くとき買って持ってくから、着てよ。着てくれる? それから脱がしていい?」 昨日の、そんな会話を思い出してる。 -
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