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危ない? - 2001年08月22日(水) このあいだの日曜日は素敵なドクターも出勤だった。わたしがいること気づいてないのかな、と思ってたら、突然患者さんのことを聞いてきたりして嬉しかった。 帰ってからあの人に話したら、 「最近の僕の静かな怒りを知らないだろ」って言った。 「怒ってるの?」 「怒ってるよ。でもさ、きみはそうやってドクタードクターって言ってるけど、ほんとは僕だけが好きなんだろ?」 「すごい自信じゃん。」 「すごい自信だよ。わかってるって、きみが僕のことどんなに好きかってことくらい。」 「・・・。」 「違うの?」 「そうだよ。くやしー。」 わたしだってわかってるよ。あなたがわたしのこと好きだって。そう言ってやりたい。だけどあなたはわたしだけじゃないんだもんね。 次の日の月曜日、デートに誘われた。素敵なドクターじゃなくて、ハンサムなドクターに。レジデントのドクターで、顔がやたら二枚目、今はオリエンテーション期間でまだ実質的には仕事を始めてない。顔がほんとに世間でいう「男前」で、わたしの苦手なタイプ。「顔がよくてヤなやつ〜」って思ってた。そしたら先週1階のロビーで声かけられて、「ホラ、やっぱり顔のいいやつはコレだから」と思ったら、マトモに仕事の話を聞いてきただけだった。 前の晩泣き明かしたから、月曜日は目を腫らしてすごい顔してた。素敵なドクターは代休だったからよかった。「きみと同じくらい大事」が頭の中をぐるぐる回って鬱々してたら、ハンサムドクターが話しかけてきた。「どうしたの? 今日すごい疲れた顔してる」「うん、土日仕事だったから。すっごい忙しくてくたびれちゃった」。お昼休み近くになって、「ちょっとちょっと」って手招きする。「なあに?」「今週いつか、一緒に出かけない? ダメ?」。 気晴らしが出来ると思って、飛びついた。金曜日の夜の約束をして、電話番号も教えた。こういうとき、いやだったらどうやって断るんだろう。ナンパだったら「いやよ」の一言で即座に片付く。でもちょっとだけ知り合って、これからおんなじフロアで一緒に仕事する人。「あたし結婚してるんだよ」は言いたくない。「ダメだよ。彼に叱られちゃうから」なんて、悲しすぎて言えない。「ごめんなさい、ダメ」って言えばいいのか。だけど気晴らしが欲しかった。遊びに行っちゃえって思った。夜、電話がかかってきた。「突然デートに誘ってびっくりした?」。やっぱり顔のいいやつは・・・って思った。 「昨日デートに誘われちゃった。ほら、前言ったでしょ? 顔がよくてやだと思ってたら結構話の出来る人だったってドクター。」 「行くの?」 「行くよ。金曜日の夜だから帰って来ないかもよ。電話番号も教えちゃった。」 「バカッ。」 「ゆうべ、さっそく電話かかってきたよ。」 「何て?」 「何してるのーって。」 「それから?」 「いろいろ。30分くらいしゃべった。あの素敵なドクターだったらよかったのにな。あなたのこと彼女から横取り出来ないから、素敵なドクター彼女から横取りしちゃうの。」 「また困らす・・・。すんなよ、絶対。」 「怒んないの? デートしても。」 「イヤだけど、行くんだろ? 食べられたら、怒る。」 「なんて?」 「叩く。」 「叩けないじゃん。あたしその人のこと、あなたとおんなじくらい好きになる。あなたとおんなじくらい大事にする。あなたとおんなじになるんだ。」 「・・・。」 今度は本当だよ。前みたいな作り話じゃないんだよ。デートしちゃうんだよ。食べられたっていいって思ってるんだよ。あなたのせいなんだから。ーぐじゃぐじゃだったわたし。 昨日まで、悲しいのとうらはらに、ウキウキしながら考えてた。何着てこうかな、黒地にバラの蕾のドレスかな、マニキュアはラメのローズ? ラヴェンダー? オレンジのドレスだったらパールホワイトのマニキュアかな、シルバーグレイかな? 気合い入ってるって思われたらやだから、洋服は適当なセットアップにしとこうかな。 そして今日突然、イヤになった。気晴らしに危ない男とデートなんて。あの人が泣いちゃうほど意地悪して、それなのにあの人は一生懸命わたしの機嫌直してくれようとして、ゆうべ、もう悲しませるのやめようって決めたのに。 でも行っちゃう。今までだって、決めたことなんか守ってない。食べられないように気をつけるよ。大丈夫だよ。 -
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