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いっぱい - 2001年08月29日(水) ひたすら忙しかった一日。 ナースステーションがごった返してた。 コンピューターがやっと一台空いたと飛びついてるすきに、 使ってた患者さんのメディカルレコードを誰かが取っていってしまう。 ドクターオーダーのバインダーも取り合いで、自由に使えない。 患者さんを診てるあいだにもナースステーションから呼び出しのアナウンスが聞こえる。 今週から本格的に仕事を始めたハンサムドクターも走り回ってる。 頑張ってるなあって思いながらわたしは見てる。 すれ違いざまに「今日は大変だね」って声をかけられる。 昨日電話で「今度ランチ一緒にしようか」って言ってたけど、 今日は絶対無理だなって思う。 遠くにいるあの人を、こんな忙しいときでも相変わらず想いながら、 そんなこと思ってる。 お昼からはハンサムドクターの姿はなくて、どこのフロアにいるのかなって思う。 6時前にやっとフロアの仕事を終えて、オフィスでコンピューター入力。 めちゃくちゃくたびれてる。 「いつでもペイジして」って教えてくれたペイジャーの番号をうちに忘れてきちゃって、あ〜あ、なんて思う。 あの人の声を早く聞きたいと思いながら、 そんなこと思ってる。 いつもより遅い約束の時間より早くうちに帰れたから、待てなくて電話をかけた。 あの人は、わたしの仕事の話を聞き出す。 とっても疲れてるとき、いつもわたしの仕事の話を聞きたがる。 「あなたのことが大好きよ」って抱きついてきた今日の最後の患者さんの話をしてあげる。 刑務所病棟の、エイズで精神疾患の患者さん。自分は消化システムがおかしくて何も食べられないと思い込んでて、痩せていくばかり。「うちに帰りたい。うちに帰ったら、食べられるのに」って悲しい顔して訴える。帰れないのをわたしは知ってる。「そのまま帰っちゃったら、あたしが心配だよ。ね、ファリーナだったら食べられそうじゃない? スープは?」。根気よく根気よく続けるうちに、「ファリーナ食べてみる。トマトのスープも食べられるかもしれない」って言ってくれる。でも、前からずっとこの繰り返し。ジェローやプディングなら食べてくれるけど、それじゃあちっとも追いつかない。食べるとき、ついててあげたいと思う。 「誤解しないでね、あたしはレスビアンじゃないのよ。だけど、あなたのことが大好き」。今日はそんなこと言ってくれた。 あの人は笑わない。よかったじゃんって言ってくれる。頑張ってるなあって言ってくれる。「そういうの、しんどい?」って聞くから、「ううん、全然しんどくない」って言うと、よかった、嬉しいよ、って言ってくれる。 予定よりたくさん話せたのに、電話を切るときがいつもより淋しい。 ハンサムドクターの存在が、少しづつ特別になる。 わたしの中の、あの人の彼女の存在が、存在への認識が、それにつれて大きくなってる。 そして、あの人への想いが、切なさを増してまた大きく膨らんでいる。 もう、いっぱい。 平気になんて、なれないじゃん。 -
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