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Close your eyes - 2001年09月26日(水) 涼しくなった。昨日まで半袖で平気だったのに、今日は薄いジャケットじゃ寒いくらいだった。ほんとにここはいつもそう。季節が突然ジャンプしたみたいに変わる。素足にパンプス履くのが好きなのに、もう出来なくなるかなって思う。帰り道ももう暗い。 今日はいいことがあった。可愛いインターンのドクターと仲良くなった。ショートヘアがボーイッシュで、すっぴんにそばかすが似合ってて、ひょろっと伸びた手足の表情がサバサバしてて、そういうのがさまにならないただ男みたいな女の子はいっぱいいるけど、彼女はそれが滅茶苦茶可愛い。大股広げて椅子の背に思いっきりふんぞり返るとこなんか、吹き出しちゃうくらい可愛い。 ドクターについて何回か一緒に仕事してたから、顔は知ってた。ちょっとだけ話をしたこともあった。今日は突然話しかけてきてくれて、とりとめのない話いっぱいした。ドクターなのに、「あたしもカウンセリングして〜。教えて欲しいこといっぱいあるの。自分の体に必要なものもわかってなくて、どうすればいいのか知りたいの」なんて言うところが、ほんと可愛いと思った。 そんなことだけで、なんか一日また頑張れた。フロアの担当医のリストのなかの、ドクターの名前の上に線が引かれてるの見つけて淋しくなったり、患者さんのメディカルレコードの担当医の欄の、ドクターの名前の下に新しい名前を見てがっかりしたり、そんなのもあったけど。 わたしのからだを覆ってた、そばにドクターがいるっていう安心のベールが消えちゃって、殻から抜け出たみたいに元気よく仕事してる自分にも驚いた。 あの人は10月に、予定通りアメリカに来ることになった。日にちが少しだけずれるけど。アメリカ人にウケるジョーク教えてよって言う。簡単なやつふたつ教えてあげたら、「ウケる? ほんとにソレ、ウケる? 信用できないなあ」って言いながら、ちゃんと気に入ってるのが可笑しい。それから「こういうのは?」ってあの人が聞く。 「『Close your eyes』って目ェつぶらせて、自分の目に10円玉入れて、『オッケー、目開けて』って言う。」 「うん、うん、ウケるウケる。でもさあ、一体何考えてんの? 何しに来るのよ。」 「いや、愉快な日本人を紹介しようと思ってさ。」 「Close your eyes」の歌が頭の中で流れ出す。 目を閉じて、深呼吸して。 それからこころを開いて、囁いて。 愛してるって言って。愛してるって。愛してるって。 きつく抱きしめて、おやすみは言わないで。 今だけ全ては上手く行ってるから。 抱きしめて、ねえ、愛してるって言って。 違う。違う。違う。 こんなのが欲しいんじゃない。 でもふりをしなくちゃいけないのなら、 それでもかまわない。 目を閉じて、大きく息をして。 こころを開いて、そして囁いて。 愛してるって言って。愛してるって。愛してるって。 恋人のふりをして、会いに来て欲しい。 恋人のふりをして、抱きしめて欲しい。 恋人のふりをして、愛してるって言って欲しい。 ドクターにもずっと、恋人のふりしていて欲しい。 今日もドクターの声は聞けなかった。恋人のふりも消えちゃったの? 素足にパンプス履けるあいだに、会いに行きたい。 -
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