天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

愛してるって言えない - 2001年10月06日(土)

ドクターのお部屋で見つけた本。
「A Return to Love」。
こんなの読むのかなって思って手に取ってみる。
表紙をめくると、ボールペンの手書きの文字。
誰かからの贈り物だ。

最後に書かれた I love you と女の子の名前。
別れた恋人なのかな・・・。

ゆうべ仕事で一睡もしてないドクターは
シーツにくるまってベッドに沈むみたいに眠ってる。
ここにも天使がいる、なんて思ってしまいそうな、
その眠りの中に吸い込まれてしまいたくなるような、
あたたかで穏やかで無防備で罪のない寝顔。

静かな静かな昼下がり。
わたしはベッドから抜け出して、
床に落ちたタンクトップを拾い上げる。

そうっとベッドの隅っこに座って、
本のページをめくる。

愛してるって言えるのは、
こころが開いているからだよね。
受け止めてくれるこころも開いてるのを、知ってるからだよね。

もっとおしゃべりがいっぱいしたかったけど、
夕方からの仕事の時間ぎりぎりまで
ドクターを眠らせておいてあげる。


「今日は車のところまで送ってくれなくていいよ。」
「下まで一緒に行くよ。」
アパートの玄関を出たところで
ドクターはわたしの腕を引き寄せた。
そしてゆっくりゆっくりくちびるを重ねた。
腕を伸ばして背伸びをしてドクターの首に絡みつく。
ドクターはわたしの頭を抱き寄せて
腰を力いっぱい抱きしめてくれる。

「いってらっしゃい。気をつけてね。」
「Okay」
「休暇、うんと楽しんで来てね。」
「I will」
「あたしのこと忘れないでね。」
「Okay」
「ほかの子とセックスしちゃだめだよ。」
ドクターは笑う。
「なんで笑うの? 笑わずに言ってよ。」
「『Okay』」

「淋しくなるよ。」
わたしはドクターの頬に自分の頬をすり寄せる。
ドクターはぎゅうっと腕に力を入れて、
それから何度もわたしの髪を撫でた。
「向こうからメールするから。」
「きっとだよ。」

たった2週間、休暇に行くってだけじゃない。
それなのに。
来年、ドクターがここを離れてしまうとき、
わたしったら一体どうなっちゃうんだろう。

愛してるって言えたら、
つかまえておくことが出来る?
愛してるって言えないから、
どこにも行けない気持ちが息苦しいの?

愛してるんだ、わたし。違うの?
だけど認めたくないんだ。違う?
それともただ甘えていたいだけ?
愛してるのはあの人だけだから?
それともそう思っていたいだけ?

わたしはこころを開けない。
ドクターもこころを開かない。
だから言えない 「I love you」。

だめだよ。
「愛してる」は、いつか、いつの日か、あの人に言う言葉なんだから。



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