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飛行機 - 2001年10月07日(日) 朝まで仕事をしたあと、今日ドクターはブラジルに飛んだ。 朝までうち合わせをして、明日あの人がアメリカに来る飛行機に乗る。 地図を見たら、ブラジルはあの人が来るところより、ここから遠かった。 ドクターがあの人より遠いところに行く。 あの人がまた3時間しか時差のないところまで来てくれる。 淋しい? 嬉しい? あの人が来るのが嬉しい。 前に来たのは、ふたりが知り合って一年の記念日だった。 あの日、アメリカに来る前の晩、あの人は彼女と一緒に過ごした。 「彼女と会うの?」。昨日聞いたら、おじいちゃんのことがあってそれどころじゃないって言った。「行く前に会おうって言ってたけど」。聞いたのはわたしだけど、聞きたくないことまで言うあの人。胸がずきんと痛んだ。またゆうべ彼女と一晩過ごしてたら、一緒にいる二人を思って、わたしは前とおんなじくらいに苦しかった? あれからちょうど5ヶ月。 1年と5ヶ月。 想い合う月日だけが流れて、会った日の数は変わらないね。 5日の数字は変わらないけど、変わったことはある。 あなたが彼女との結婚を決めたことと、そのせいでわたしの胸がいつもキリキリ痛くなったこと。 わたしがドクターに出会ったことと、そのおかげで胸のキリキリが少し減ったこと。 そしてあなたに秘密が出来たこと。 だけど、天使を愛するこころは変わらないよ。 愛おしくて愛おしくて愛おしくて、こころの一番深いところで大切な大切な人。 いつもよりずっと近くにいてくれるのが嬉しい。 だけど前の時ほどこころが踊らないのは、 アメリカに来てくれてもやっぱり会えないからじゃなくて、 ドクターのせいでもなくて、 今度は一週間しかいないからでもなくて、 前より忙しくて電話も殆どしてもらえないからでもなくて、 おじいちゃんの心配をあの人が抱えたままなのと、 それから、この国に来ることそのものが心配なせい。 ここで今何かが起こるとは思えないけど、空気はピリピリしてる。 入国審査も厳しくなってるって聞いてる。 あの人も言ってた。ミュージシャンの機材なんか警戒されて、スピーカーをバラしてまで中をチェックするらしい。それに機材は小さくても機内に持ち込めないかもしれないって。あの人の大事な機材を壊さないで。悪いことが何も起こりませんように。 あの人が着く時間を計算する。月曜日のお昼。ここの夕方。 「着いたら電話して。」 「出来たらする。スタッフが一緒だし、出来るかどうかわかんないけど。」 「だめ。心配だからして。こっちも月曜日、祝日なの。あたし、うちにいるから。」 「わかったよ。だけどもし着いてすぐ出来なくても、その日のうちにはかけるよ。」 「うん。コレクトコールでもいいから、かけてね。」 泣きそうになった。行ってらっしゃいって明るく送り出してあげなきゃって思ったら。「泣いてるの? 笑ってるの? どっち?」って笑われた。「わかってるよ。心配しないで。好きだよ」。会いたいよ。あなたに会いたい。あなたが来るところまで、会いに行きたい。叶わない思いがまたこみ上げて来て、胃のあたりを刺す。 ブラジルには15時間かかるって言ってた。途中でトランジットがあるから。あの人とドクターが同じ雲の上を飛んでる重なる時間がある。そんな、意味のないこと考えた。 -
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