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声 - 2001年10月15日(月) 電話ありがとう。 きみの声が聞けて嬉しかった。 元気? ドクターは今日も近くのインターネット・カフェからメールをくれた。 いつも10代の子どもたちがたむろしてて、奇声を上げながらなにやら戦闘ゲームに夢中になってる所らしい。BGM に Destinyユs Child の「Survivor」が流れてるよ、なんて、ちょっとシニカルなジョークを書いてた。 「きみの声が聞けて嬉しかった」。 その部分をコピーして拡大してプリントアウトして、壁に貼っておきたいと思った。 メッセージのない留守電が入ってた。 あの人だ。「これから日本に帰るよ」って電話をくれたんだ。なんでメッセージ入れてくれなかったのかな。 「きみの声が聞けて嬉しかった」。 わたしの顔にかかる髪をかきあげるドクターの指。手を繋いで歩いてるときにいきなり抱き寄せるドクターの左腕。タクシーを待つあいだにぎゅうっと抱きしめてくれるドクターのからだ。そんなのをいっぺんに思い出した。 そしてあの人の微笑みが見えた。 なんであの人じゃないんだろう。髪をかきあげてくれるのも、抱き寄せてくれるのも、抱きしめてくれるのも。 目をつぶると、あの人があの微笑みのままで、あの指で、あの腕で、あのからだで、おなじことをしてくれる。ほらね。わたしはいつだって空想の中で、あなたの恋人になれるんだよ。 「きみの声が聞けて嬉しかった」。 そんなこと言ってくれたの、初めてだね。ドクターもあの人とおんなじで、甘い言葉なんてくれないから。返事を書いた。 早く帰って来てくれて、嬉しい。 だって、もうあなたが恋しいよ。 ここはもう、葉っぱが色を変え始めました。 綺麗な秋の色になった木の下を歩きたい。 帰って来たら、あの公園に連れてってね。 あの人は今飛行機の中かな。 ごめんね、電話くれたのに。 ・・・わたしの声が聞けなくて、淋しかった? -
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