![]() |
罪の意識 - 2001年10月26日(金) 「今度、日曜日に電話するね」って昨日あの人が言った。 金曜日の夜は? 土曜日は? 「彼女と会うの?」 「会わないよ。」 「うそつかなくていいんだよ。」 「うそなんかつかないよ。」 「彼女のところに泊まるの?」 「泊まらないって。そんなこと最近してない。」 「・・・だって、明日の夜も土曜日も電話出来ないんでしょ?」 「そんな心配しないの。ほんとに会わないって。仕事なんだから。」 試したかったの。知ったらやっぱりまだ苦しくなるかなって。 うそつかなくていいんだって。そう思いながら、うそじゃないって信じてる。よかったって思ってる。自分はあの人に内緒でドクターに抱かれるくせにね。 早くコレを乗り越えたいよ。彼女のこと考えても苦しくならない時が来て欲しい。 「明日電話するよ」。 おととい病院からかけてきてくれたドクターは、少ししか話せなかったからそう言ってくれた。ずっと待ってたけど、電話は鳴らなかった。きっとかけてくれたんだ。またあの人と話してるとき。ずっと待ってて、気がついたらもうドクターは寝てる時間。こっちからもかけられなかった。 今日病院でアナウンスがあった。監査は92%でパスしました、って。前回は97%だったらしいけど、誰もそんなの気にしてない。去年、おんなじシティの病院で、パスしなかったところもあったらしい。アナウンスを聞いて、みんなで拍手した。嬉しかった。一週間の監査が終わって、病院中がほっとしてる。わたしは月曜日から、ICU の病棟二つを持たされる。精神病棟と刑務所病棟はもうお終い。好きだったのにな。ドクターと一緒に仕事した B5 は、このままずっと担当でいられますように。 朝ナースステーションに行くときに、ドクターがいたらいいのにな、ってときどき思う。「どうしたの? なんでいるの?」って聞いたら、「今日一日だけこの病院のローテーションが入ったんだ」ってドクターが笑いながら言って。「言ってくれなかったじゃん」「驚かそうと思ってさ。お昼一緒に食べに行こうか?」「うん、行く! 前連れてってくれたとこがいい!」。なんて、空想癖に浸るわたし。 月曜日、会える。言い訳考えて、一日だけ勤務時間を変えてもらった。オーバーナイト明けで午前中にはドクターは仕事が終わる。 アパートのドアを開けてくれる瞬間が好き。抱きしめてくれる。わたしはドクターの胸で、大きく息を吸う。そして息を止めてドクターの体を感じる。頭のてっぺんから足の先まで、ドクターの温もりが一気に溶け込む。 月曜日のその瞬間を思っただけで、胸がじーんとした。それでまた帰りの高速の出口、見落としちゃった。 「ドクターはなんて電話してきたの?」。 昨日、あの人は気にしてた。 「別に用事じゃなかったの。」 「なんにもないのに、かけてきたの? そういうのが危ない。」 もうね、危なくなんかないんだよ。危ないのは通り越えちゃったから。危なくなくて、安心なんだよ。あなたがくれる痛みが消えるから。 ドクターは、まだ別れた恋人を想うの? 痛みは消えた? まだ消えない? あの人の彼女のことが苦しくならない時が来れば、わたし、罪の意識から少しだけ解放されるのかな。 -
|
![]() |
![]() |