天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

サマータイムの最後の日 - 2001年10月27日(土)

窓から見える駐車場の木のてっぺんが真っ赤に染まってる。青い空と白い雲と赤い葉っぱのコントラストがあったかそうなお昼近く。急いでシャワーを浴びて、出かける用意をした。

外はツーンと寒かった。ヒーターの入っているお部屋にいると、外まであったかそうに見えるんだ。いつもそれで失敗。ニットのロングコートの下の、半袖の腕がスースーした。

初めてここにアパート探しに来たときに、1週間泊まった街。あのホテルはオーナーが変わって、名前も外観も変わっちゃったけど、ひとりぼっちのわたしをいっぱい助けてくれたところ。ちっちゃいけど、おしゃれなお店がたくさんあって、今でもときどき行きたくなる街。今日、髪を切りに行った。

予約したとき、前にカットしてもらったオジサンの名前を忘れちゃって、容貌を説明したけど不安だった。行ったらちゃんとオジサンが迎えてくれた。フランクって名前だった。

「ずいぶん来なかったね。前いつだっけ?」ってフランクおじさんは聞く。そうやって覚えてるふりするんだなあって思いながら、「えっと、5月」って答える。「そうそう、卒業式の日だったね」。へえ、ちゃんと覚えてるんだ。インターンの卒業式の朝だった。あの人がアメリカに来てて、前の晩に電話でおめでとうって言ってくれた。あれから半年も放っておいた髪。「今日はどうするの?」「長さはこのままにしておきたいの。少しだけトリムしてほしい。それでもっといっぱいレイヤーが欲しい」。ドクターのご要望通り、長い髪はとっておく。前はイロイロ注文つけて、切ってくれてる間も、こういうのがいいの、こういうのはイヤなの、ってごちゃごちゃ口出ししたけど、フランクおじさんは「ハイハイ、わかってますよ」って笑いながら予想以上の髪にしてくれた。だから今日は何も言わない。はさみを器用に滑らせて、シャギーなレイヤーを思いっきり入れてくれる。「ソレ好き」「僕も好き」。おかしくって笑う。ここで自分に合った美容師さんに出会うのは難しいのに、フランクおじさんはこんな髪をきれいに見せてくれるほど腕がいい。「素敵になったよ」「ありがとう」。ドクターはなんて言うかなって思いながら、久しぶりの街を歩いた。

バルクフードのお店で、パタックスのカレーペーストの瓶を見つけた。マンゴのチャツネと乾燥コリアンダーも一緒に買った。


秋色に染まった景色を走る車の中で「Let me be your hero」が流れてきて、胸がいっぱいになった。いっぺんにいろんなことを思い出した。あの人のあの言葉もドクターのあの言葉も。 Who is my hero? Who would be my hero?  それはあの人じゃない。ドクターは? Please be my hero. Please....  このまま7月が来ないで。ずっとそばにいて欲しいよ。胸がいっぱいなのに、いろんな思いがまだあとからあとから溢れてきて、溺れそうになる。なつかしい街のせい? 秋色の景色のせい? 甘いメロディーのせい? 切ない歌詞のせい? あの人への想いが苦しい。苦しくて息が出来ないほどなのに、ドクターの可笑しい言葉を思い出して、くすくす笑う。笑ってるのに涙が出る。


今日でサマータイムはおしまい。
時計を1時間戻して、もとの時間になる。おもしろいね。なんでこんなことなら、誰も何も抵抗せずに、反対せずに、疑問も持たずに、当たり前のようにみんなで一緒に出来るんだろうね。みんながひとりずつ時計を戻して、時間を変えちゃうんだよ。

ドクターは1時間余分に寝られるね。オーバーナイトが今日じゃなくてよかったね。だって、そうなら1時間余分に仕事しなくちゃいけない。

あの人との時差がまた1時間増える。あの人がまた遠ざかる。



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