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Only for you - 2001年11月04日(日) 胸にぽっかり穴が開いたようで、それなのに何もないそこがキリキリ痛くて、 窓から差し込む陽差しが頬に熱いのに、体を流れる血は冷たいようで。 今はまだ、あんなに優しかったいろんなときの表情よりも、 おとといアパートに押しかけたときの、あの冷たい顔ばかりが浮かんでくる。 天使の微笑みがずっとずっと頭の中でくるくるくるくる回ってる。 昨日もおとといもそうだった。助けてよって思ってた。今は微笑みが「バカだな」って笑ってる。 ブラジルのお土産は、ビキニじゃなくてタンクトップだった。帰って来た日に電話で言ってくれた。 「すっごいかわいいよ。カメのタンクトップ。」 「嬉しい。ありがと。で、何枚買ったの?」 「どういう意味?」 「何人分ってこと。ねえ、何枚買ったの?」 笑って答えてた。 「何言ってんの? 一枚だよ。」 「ひとり一枚?」 また笑いながら言う。 「きみにだけだよ。」 「ほんと?」 「信じられないよ。何枚買ったの、なんて。」 わたしの言葉を繰り返して笑ってた。 カメのタンクトップ、かわいかった。「Only for you」って電話の言葉が嬉しかった。最後にアパートで会ったあの日に渡してくれた。ありがとうって抱きついて、ほっぺにキスした。どういたしましてってお返しに抱きしめてくれた。にわとり島って意味の名前の島で買ってくれた、にわとりのキーチェーンもくれた。「僕も自分にいっこ買ったんだよ」って。それは only for us two? 「このにわとり、あなたに似てる」「似てないよ」「似てるよ。かわいいじゃん」。12月のお誕生日に何あげようかなって思ってた。 そこで記憶が止まればいいのに、思い出すのはそのあとのこと。それから、金曜日の夜のこと。「きみは僕に嘘をついた」。 悪いのはわたし。悪いのはわたし。 しつこいな、わたし。まだ言ってる。 あの人の携帯は壊れてて、今日やっと話せた。 なんてあたたかいんだろうって思った。あの人の声が。 「あたしね、もう完ぺきにふられたの。」 「・・・。なんで?」 「結婚してたから。隠してたの。歳も言わなかったから。」 「忘れなさい、もう。」 元に戻ったね。 あなたはずっとそこにいてくれて、いつでもそこにいてくれて、 こんなわたしのこと怒らないでいてくれて、 何があったのかなんて何も聞かないでいてくれて、 あなたがそんなふうにそこにいてくれることが、どんなに大切なことかわかった。 わたしのすべてを受け入れてくれてることが、どういうことなのかわかった。 わたしのあなたじゃないけどね。 でももうね、痛くないんだよ。 「きみと同じくらい大事」って彼女のこと言ってた言葉。 こんなに遠回りして、あの痛みが消えた。 違うか。元に戻ったんじゃないか。苦しいの、消えたもんね。 また元に戻るかもしれないけどね。 帰って来たんだよ。ちゃんとあなただけに。 すぐには忘れられないと思うけど。 わたしのこころ、傷がついて、痣が出来て、かなりへこんじゃったけどさ、 これから一生懸命、治してあげるの、only for you 。 にわとりのキーチェーン、使ってるのかなあ。 何言ってんだろ、わたし。しつこいってば。 -
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