やさしい人たち - 2001年11月09日(金) 昨日は明日の出勤の代休だった。何もしなかった。何もできなかった。 ほんとになんにも出来なくて、机の前にただ一日ずっと座ってた。ぼーっと置き物みたいに。 今日は元気になれると思ってた。あんまりなれなかった。 それでもニコニコ笑って仕事が出来るなんて、わたしってどうなってるんだろう。 B5 の病棟に行く廊下を歩きながら、 ナースステーションにいてくれたらいいのにな、なんて相変わらず思う。 そしたら「元気?」って特上の笑顔で言おうって。 でももう何も話なんかせずに、帰るときに「バイ」ってまたにっこり笑って言おうって。 だけど、もしもランチに誘ってくれたらオーケーして、 いつもそうだったように平気でパクパク食べて、食欲旺盛ぶり見せつけて、 「ばっかだねえ、こんないい女ふっちゃって。これからが貴重な体験だったのにさ。2回も結婚して、この歳でこんなに若々しくてかわいい子なんかいないよ。だって年上だよって言ったとき、自分と同い年くらいだと思ってたってあなた笑いながら言ってたじゃん。ね、そのときと、歳も過去も知った今と、あたし違う? おんなじでしょ? そんなの関係ないって思えなきゃ、プレイボーイが形無しじゃん。」 って言ってやろうって。それから、 「あたしね、あなたのこと、プレイボーイかもしれないけど、ホントはとっても愛情が深くて繊細な人だってわかってた。それからね、嘘つけない正直なところが好きだったよ。」 って言ってあげようって。 今じゃなきゃあ、時間が経つと意味ないのになあ、って思ったり。 ランチパーティに出かけたチャイニーズのお店で、チャイナタウンで一緒に食べたごはんのこと思い出してた。ICU の病棟のドクターに経管栄養を処方しながら、ベッドの中で経管栄養のことなんか聞くから笑っちゃったこと思い出してた。 なんで憎めないんだろうね。なんで嫌いになれないんだろうね。なんでいつまでも、ごちゃごちゃ考えてるんだろね。 あれから一週間。 そのあいだに届いた、いくつかのメール。 自分のことみたいに心配してくれたり、 「よく頑張ったね」って、元気づけてくれたり、 「ドクターはずるい」って怒ってくれたり、 ただただ怖くて言えなかった気持ちをわかってくれたり、 時間が癒してくれるからって励ましてくれたり。 2通くれた人も3通くれた人もいた。 優しいカードももらった。 自分の日記に名前を出さずにわたし宛てのメッセージを綴ってくれた。 今回ばかりは、支えられてるっていうより、包まれてるって思えたよ。 「自分の心を守るための嘘なら、許される嘘じゃないかな」って日記を見つけて、 まるでわたしにくれた言葉みたいで、胸が詰まった。 こんなちっぽけな失恋、誰でも一回は通って来たよね。 もっともっと悲しい経験してきたはずなのに、こんなのからわたしったら簡単に立ち直れない。 「だってあたし、ふられたことなかったんだもん。」 恥ずかしいけどほんとなの。こんなに長いこと生きてきて。 「うっそぉ〜? 贅沢なヤツー。ムカつく。」 「あなたはあるの?」 「あるよぉ、何回も。」 「辛かった?」 「もう慣れた。」 そんなふられてばっかの人、わたし愛してるのか。なんてウソ。さりげなく元気づけてくれるのが、あったかいよ。 浅い傷ほど痛いってことはある。 だけど、浅い傷。治るのだって早いよね。 それに、やさしい人たちがいる。 ・・・ほんとに、ありがとう。 明日は元気で仕事に向かえるかな。 早く時間が流れろ。 -
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