好きだから結婚する - 2001年11月11日(日) 結婚して最初のバースデーに、「今日は僕が料理するよ」ってインスタントラーメンを作ってくれた。ラーメンは煮すぎてのびのびになった。「おかしいなあ。いつもはもっと上手に作れるのに」って本気で照れてる顔を見て大笑いした。のびたラーメンはおいしかった。おいしい、おいしい、って言いながら食べた。 もう15年も前の、最初の結婚をしたばかりの頃のこと。 今日突然、そんな風景を思い出した。 誰も悪くなかった。優しい夫だった。離婚は辛かった。反対されてうちを飛び出すように結婚したのに、一緒に暮らすことの意味がわからなくなった。何度も何度も話し合って、それでもわかり合えなかった。旅行にも連れてってくれたし、食事にも出かけたし、コンサートにも一緒に行ったし、人から「いいわねえ、いつまでも恋人同士みたいで」って言われたけど、「こんなの一緒に暮らす意味じゃない」ってわたしは思ってた。わかり合えないままに、ふたりで泣きながら別れた。 今でも、どうしてるのかな、どこに住んでるのかな、幸せでいるかな、って思う人。 別れたときには、そばに今の夫がいた。愛してた。離婚するのはこの人のためじゃない、って必死で思い込もうとしてた。でも結果的には、そういうことだった。夫は「一緒に暮らせる」人だった。結婚なんかしなくていい、一緒に生活がしたい、と思った。籍を入れたのは、外国で暮らすのにはその方が便利だったから。 籍を入れることに、それ以外にあまり意味はないと思ってた。だけど結婚と同棲は違った。一緒に何かを築いて行くとか、一緒に愛情を育んでいくとか、そういうことが無意識のうちにふたりで暮らすことの意味になってた。最初の結婚のときにも、夫と同棲してたときにも、それは意識して考えてたことだった。いつも確認してたことだった。 少し先の幸せのためなら、今を犠牲にすることなんて何でもないと思った。でも夫は今が幸せじゃなければ幸せの意味はないと言った。 いつのまにかまた、一緒に暮らすことの意味は、考えなくちゃわからないコトになってた。そして、考えてもわからないコトになって行った。確かめようとするたびに、お互いを傷つけて、それぞれが傷ついた。 今日、あの人が夫のことを聞いた。「もう、離婚しようと思ってる」って答えた。好きなところは好きなまんまで、夫の仕事も尊敬してて、病気のことだけはいつも気にかかってて、だけどどうしても許せないことと、相容れないことがある。「やり直そう」って決めて元に戻ったところで、たとえうわべは上手く行ったとしても、お互いに心の底に抱えてるものはきっと消えない。わたしにとって、結婚はそんなものじゃない。そんなことを話したら、あの人は言った。「ほんとにきみが離婚したいのかどうか、ちゃんとゆっくり考えなよ」。もう何度も考えた。そして、自分を誤魔化して生きることはしないって、この前決めた。 「・・・あなたはいつ結婚するの?」 ずっと怖くて聞けなかったことを聞いた。 「少なくともあと1年はしないよ。出来ないよ。もっと仕事がうまく行って、きみにちゃんとお返しするまではね。」 ずっとわたしにあることのお礼をするって言ってくれてて、いつかわたしは、結婚しながら彼女に隠れてそんなお礼はしていらないっていう意味のことを言った。泣きながら言った。あの人は「きみを悲しませない方法を考える」って言ってくれた。あれ以来、その話をあの人はしてなかった。 少しだけ嬉しかった。思ってたより結婚が先なのも、少しだけ嬉しかった。 「なんで結婚するの?」って聞いたことがある。「好きだからだろうなあ」って答えてた。そんな結婚こそ、きっと幸せなんだろうなって思った。 あの人をこんなに愛しながらなんて、やっぱりわたしは結婚なんかもうしないだろうなと思う。あの人を愛しながら、抱かれた人はいたけどね。あの人を愛しながら、まだ立ち直れてないけどね。あの人を愛しながら、また誰かを好きになるかもしれないけどね。でもやっぱり、あの人を愛しながら結婚は出来ないよ。 考え過ぎるほど考えるから、うまく行かなかったわたしの結婚。 好きだから一緒に暮らしたいあの人の結婚。 幸せな結婚、して欲しいって思うよ。 あなたに、幸せでいて欲しい。 ほらね、あんな遠回りして、やっぱり痛みが少し消えてる。 -
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