天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

Happy Thanksgiving - 2001年11月21日(水)

高速までのハイウェイは、まだまだ両側を黄金の葉っぱが溢れるように覆ってる。ここの紅葉ってこんなに素敵だったかなって去年のことを思い出してた。前に住んでたところは、高い高いオークや楓の街路樹が、色とりどりの葉っぱを眩しい陽にキラキラ踊らせてそびえてた。澄み渡るまっ青な空を背に、見上げる葉っぱたちはそれは鮮やかな色だった。それに比べるとここの紅葉なんて、落ち込んでしまうくらいつまらないと思ってた。

今は、ハイウェイ沿いの木々のてっぺんから足元までたっぷりと見事に染まった黄金色に、息をのむ。大きな家の庭一面に広がる黄金色の海に、胸がいっぱいになる。高速に入ってからも、シティに向かうというのに都会のなかにどこまでも続く黄金の滝を、切なくなるほど美しいと思う。

去年見つけられなかったのは、なぜだったんだろう。今年見つけたのはなぜなんだろう。こんなに切ないのはなぜ? 理由を考えると胸が痛くなる。


昨日、サンクスギビングの素敵なカードを見つけた。
赤や黄色に埋め尽くされた紅葉の写真が、言葉と一緒に次々と変わる。

「 神さまの恵みをお祈りし、
  すべての良きことがらに感謝し、
  あなたとあなたの家族に幸せと喜びが訪れますよう願いを込めて
  Happy Thanksgiving 」

わたしは結局「ありがとう」を言えなかった。楽しかった時間を思い出すたびに言いたくなる「ありがとう」を、カードのメッセージに添えて送りたくなった。送ろうと思った。


今日は病院でお昼にサンクスギビングのお祝いをした。ポットラックのランチパーティ。わたしは、ワイルドライスと一緒に赤や白や茶色のいろんな種類のお米をチキンストックで炊いて、細かく切った黄色とみどりのピーマンを散らしたごはんと、チーズをいっぱいおろして焼いたクリームソース仕立てのペンネのキャセロールを作って行った。さすがにターキーはなかったけど、チキンをまるごと焼いて来てくれた人がいて、「ベイビーターキーだね」ってみんなで喜んだ。パンプキンパイもスイートポテトのパイもアップルパイも、死ぬほど食べた。

フロアに戻ると、フランチェスカが聞く。「ねえ、まだデートしてる?」。からかって聞いたはずなのに予想してなかった返事が返ってきて、フランチェスカは、驚いたような困ったような顔をして「ごめんなさい」って言った。

「ううん、平気。でもやっぱり淋しいかな。」
「お似合いのカップルだと思ってたのに。」
「うん、わたしもそう思ってた。」
笑ってそう言ったけど、フランチェスカは笑わなかった。

フランチェスカっていい子だよ、って話してあげたくなった。そんなに嫌わなくったっていいじゃんって。「あんなに可愛いのに、あんなイヤなヤツはいない」なんて、フランチェスカの話題になるといつもそう言ってた。見る目がないんだなあ。絶対そうだ。わたしのことだってさ。

今だに話したいと思うことが、ほかにもいっぱいある。400キロの患者さん、先週退院したのに今週また戻って来ちゃったこと。ICU の患者さんが脳死になって、昨日チューブを外されたこと。そういうことに平気になれないわたしを、いつも助けてくれた。

「大事なものを失ったことに気がついて、電話してくるよ。気づかせてやりなよ。電話させてやりなよ。そんな理由で、バカなんだからほんとに」。フランチェスカがそう言うから、そうだったらいいな、電話くれたらいいな、なんてまた思ってしまう。でも、ちゃんと平気になってから。今はわたしもまだバカだからね、また同じこと繰り返しちゃうんだから。フランチェスカが思いとどまらせてくれた。サンクスギビングの Eカード送ること。平気になったころに電話かけてよ。そのときに「ありがとう」って言いたいから。


明日はサンクスギビングだけど、仕事に行く。週末も仕事。
一緒にお祝いする家族もいないから、ちょうどいい。

セントラルパークの木たちは、もう葉っぱをすっかり落としちゃったのかな。
あの人と歩きたいと思ってた去年。あの人と歩くことをあきらめられると思った今年。

ふたつめの秋が、もうすぐ終わる。




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