あなたしかいない - 2001年11月22日(木) 患者さんひとりずつに配られた、サンクスギビングのバスケット。 700人もいる入院患者さんひとりひとりのために、前日にボランティアの人たちが、キッチンに集まってフルーツバスケットを作ってた。いつもスペイン語の通訳をしてくれるオジサンもいた。黄色いセロファンにくるまれたバスケットには、オレンジと洋梨と林檎とバナナと、小さな透明の容器に入れたレーズンが入ってた。カードを添えて。 ICU のフロアには、クッキーでいっぱいのかごがあった。ナースの誰かがスタッフに作って来てくれたらしい。チョコレートチップやレーズンオーツやピーナツバターなんかの普段着のクッキーじゃなくて、ちっちゃくておしゃれに着飾ったよそ行きのクッキーたち。 最高にフェスティブなシーズンが、始まったね。 誰ものこころが暖かく、優しく、満たされる季節。 わたしは人恋しくなる。 電話をかけたら、あの人はもう仕事に出かけてた。いつもなら取らない電話を、昨日は取ってくれた。あの人が年末の大きな仕事が決まったって言った。ささやくような声で、「喜んでくれる?」って言ってた。当たり前だよ。嬉しいよ。誇りに思うよ。ささやくような声は、出先からかけてたから。あの人がひとつずつ大きくなって行く。その度に一番に知らせてくれる。 あの人の想いなら、今はこんなに信じられる。 恋人への愛じゃなくてもいいよ。 それ以上の愛を、今は信じられるから。 恋しいのは誰の腕? あんなにも暖かくて、心地よかったあの腕? そばにいて欲しいのは誰? どんなに願っても叶わないから、あきらめようとした? 違う。ただ、淋しかった。多分それだけ。 恋しいのは誰の腕? ほんとに欲しいのは誰の腕? 誰の腕? あなたしか、いないよ。 あなたしか、いない。 今朝も電話をくれた。 二日寝てなくて、目が充血してて開けるのが痛いって言う。 目にキスしてって甘えるから、こころを込めて、いっぱいキスしてあげた。 もう、あなたしか愛せない。 どんなに遠く離れていても。 どんなに会えることが叶わなくても。 わたしのこころを暖かく、優しく、満たしてくれるのは、あなたしかいない。 このまま、その腕に抱きしめてもらうことが二度となくたって。 -
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