夫への手紙 - 2001年11月24日(土) アナタは幸せですか? わたしがいなくても幸せですか? わたしはあまり幸せじゃないけど、アナタがいないせいじゃない。 アナタがいると幸せになれるだろうかって、何度も何度も考えました。 また手を繋いで街に出かけて ふたりの大好きなショッピングを楽しんで 夜中にカフェにお茶を飲みに行ったり 早起きした休日にブレックファストを食べに行ったり。 アナタがチビたちにカメラを向ける。 わたしはその後ろで手を叩いたり口笛を吹いて、 チビたちの視線を作る。 そんな穏やかな生活を思い出しながら、 アナタの知らないこの街ででも、アナタと暮らしたあの街に戻っても、 ふたりでやり直せるのかどうか、考えました。 答えは、わかりません。 ただ、おなじような楽しいことをたくさん期待出来たとしても、 おなじような悲しくて寂しいことも、同時にたくさん予想出来るということ。 そして実際に起こってしまったときに、「ああ、やっぱり」って思うんだろうということ。 予期せぬことが起こったときより、もっと破壊的な気分に落ち込んで。 未来を考えてることにはならなくて、過去を引きずってるにすぎないのかもしれません。 でも言い換えれば、アナタとの未来を前向きに見られなくなった、ということのような気がします。 アナタの病気のことは、ずっと心配です。 ふたりが亡くした小さな命は、ずっとわたしたちのものです。 それは紙の上の約束事ではなく、わたしたちが家族であった確かな証であり、 これからも、わたしが、ふたりが、抱き続けていく確かな愛情です。 あの娘の命日には毎年こころをひとつにしてお祝いをしましょう。 日本とこことの距離なんて、あの娘のいるところからは無いも等しいでしょう? 調子が悪くなったときには、電話をください。 離れていても、出来るだけのことをするから。 だから、紙の上の約束事はもうおしまいにしてもいいんじゃないかと思います。 一年半別々に暮らして、それは何の意味もなさなかった。 ふたりにとって、何の意味もなさなかったけど、 それぞれにとっては、別の意味を作ってしまうものになるから。 ふたりで幸せになれなかった以上、 ひとりずつで幸せにならなくちゃいけないから。 ただの紙の上の約束事は、ふたりのこころを繋ぎ止めておく役には立たないものになったけど、社会の秩序というところでは、役に立たなくなったからといって放っておくわけにはいかないものだから。 アナタは幸せですか? このままで幸せですか? わたしはアナタに幸せになって欲しい。 自分も幸せになりたい。 別々に別々の幸せを見つけることが出来たとき、 お互いがお互いの幸せをほんとに喜び合える、そんなことがわたしたちには出来るような気がします。 紙の上の約束事をおしまいにしない限り、わたしたちは幸せになんかなれない。 わたしはもう多分、誰とも紙の上の約束事はしません。 -
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