クリスマスの贈り物 - 2001年12月16日(日) 朝、母から電話があった。 明日クリスマスのプレゼント送るからねって。 箱にいろいろ詰めてくれたらしい。 「入れたかったもの、全部は入らなかったのよ。でね、マフラーとくまのプーさんのお風呂セット、どっちがいい?」。 マフラーがいいです。くまのプーさんのお風呂セットって・・・。 くまのプーさん好きだったの覚えてくれてて嬉しいけど・・・。 「たばこはマルボコのメンソールだったわよね」。 こっちはたばこが高いからとても有り難いんだけど、マルボロです。 それから、「お金を少し入れとくから、好きなもの買いなさい」って。 ありがとう。嬉しい。でも生活費に消えてしまいます、多分。ごめんなさい。 来月から、大学行ってたときの奨学金の返済がまた始まる。 毎月350ドルなんて払えっこないから、なんとかお願いして最低金額を組んでもらったけど、それでも毎月200ドル。その上、あと10年の返済期間だったのが、その分利息が増えるから15年になった。あと15年奨学金返し続けなきゃいけないなんて、そんなこと母に言えない。 わたしは今年もカードしか送ってあげられない。ごめんね。 あの人へは風邪薬? 去年は例の N'SYNC の CD のほかにも、あの人の好きなミュージシャンの CD とか、欲しがってたもう日本には売ってない Duran Duran の楽譜とか、わたしとお揃いのくまのぬいぐるみとか、ローリーポップとかチョコレートとか、そんなのと一緒に、ボロボロになったって言ってたスキーウェアを新調するためのお金を、ひとつづつ綺麗にラッピングして送った。大きな包みが届いて、「クリスマスツリーが入ってるのかと思った」なんて子供みたいに喜んでた。わたしが送ったのに、入ってたものひとつづつ説明してくれたりして。喜んでくれるのが嬉しかった。 ごめんね。今年は出来ない。 今年は風邪薬のほかに、9月11日の CD-ROM を送ってあげる。 クリスマスにはもう間に合わないけどね。 まだね、忘れてなんかいないんだよ、ここの人たちは。 あの日の映像をたくさん写真にして、BGM をかぶせた CD。病院のスタッフのひとりが作ったらしい。「もう見るのはイヤ」なんて思ってたけど、飛行機が撃墜する瞬間、ビルから飛び降りる人たち、通りを逃げ回る人々、血だらけになってうずくまる人、瓦礫になったツインタワー、そんな映像がなぜか涙と一緒に底知れない愛情みたいなものを誘う。 忘れたわけじゃない。忘れるわけがない。 あの恐ろしかった日。悲しくて重苦しかった日々。日が経つにつれて増えていった急性精神疾患の患者さんたち。ロビーに溢れた献血に並ぶ人たちの数。 理屈じゃなくてね、忘れちゃいけないんだよ。 たくさんのたくさんの犠牲になった人たちがいたことを。恐ろしさに震えて震えて、抱き合ったことを。そして、多くの人が戦争なんか望んでなかったことを。覚えていてどうなるわけでもない。だけど、今でも悲しみに暮れる家族のために、今でもあのままの壊された街のために、終わったことになんかしちゃいけないと思う。 あなたならわかるよね。CD 見て、きっとわたしとおんなじように感じてくれる。 胸を引き裂かれるような痛みと一緒に、穏やかであたたかくて切なくて沸き出す泉のような、深い深い愛情みたいな気持ち。 今日はちょっとだけのクリスマスショッピングに出掛けよう。 来週のパーティの grab gift 買わなくちゃ。 国際電話利用にめいっぱい貢献してる AT&T から送ってきた、ボーナスの Macy's のギフトカードで。 ギフトカード、お母さんに何か贈ってあげられるくらいの金額だったらよかったのにな。 -
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