もう、いい - 2002年01月02日(水) 朝から喉が痛かったのが、お昼頃から熱っぽくなってきた。急いでオフィスに戻ってお薬を飲んだけど、帰る頃にまたふらふらして寒気がしてきた。車のヒーターをがんがんかけてうちに帰って、コートも脱がずにコーヒーを沸かしてあったまった。 いつもの通りにメールをチェックしたら、ドクターに送ったクリスマスの E カードの、ピックアップ通知が来てた。高熱が出そうだった。 開けずに捨てられたんじゃなかった。ホリデーの間、どこかに行ってたんだ。 それよりわたしったら、自分の名前のスペルを間違えて打ってる。何バカやってんだろ。 How are you, Kenny? Hope you enjoy this festive season, working not too hard. Be an angel and have a very merry Christmas! Wishing you all the best, ***** それだけ。何も特別なことは書いてない。でも、返事はくれなかった。 わたしのカード、捨てられたんじゃなかった。返事なんかくれなくても、もういい。もう、いい。なつかしいって思ってくれたかもしれないし、しつこいって思われたかもしれない。自分の名前のスペル間違えたりして、笑ったかもしれないし間違いになんか気づいてないかもしれない。でも、もういい。 ほかのドクターたちと話すたびに、今でも思う。なんで Kenny とは、初めからあんなに自然に、前から友だちだったみたいに、全然気を使わずに話せたんだろうって。おしゃれなシャツを着てるほかのドクター見ても、Kenny だったら靴まで好みが一緒だったのにって。ジョークを言い合って笑っても、Kenny とはもっと素敵でバカなジョークで笑い合えた、って。 でも、もういい。何がもういいんだかよくわかんないけど、もういいの。もういいよね。お願いだから、返事なんか待たないでよね、わたし。ほんとに、もういいの。 電話が鳴って、一瞬ドキッとした。 あの人だった。 また風邪がぶり返してる。 「心配ばっかりさせるんだから。ちゃんと治さなきゃダメだよ。早く治して。治さないと、誰かとデートしちゃうんだからね」。そう言ったら、あの人は 「イヤだ。ちゃんと治すから」って駄々こねるみたいに言った。 病気の心配も、電話の待ちぼうけも、もういい。 会いたくて会いたくてどうしようもない狂おしさも、もういい。 ほかの誰かとデートなんかしないから、ドクターのことももういいから、穏やかで暖かい陽だまりみたいにあの人を愛せる日々を、少しのあいだでいいから、ください。 -
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