夫の決心 - 2002年01月03日(木) 夜中の2時頃、電話が鳴った。 頭痛がひどくて、ベッドに潜り込んだまま眠れないでいた。 電話は夫だった。 11月の終わりに電話があって以来、話をしていなかった。 ずっと気になってたくせに、わたしからはかけないままだった。 「元気?」 「ん。ちょっと風邪ひいたみたい。」 「大丈夫? 今話せる?」 「うん。話せるよ。」 ベッドの中で上半身を起こして座った。 夫はあれからずっと考えてたって言った。もうおかしくなるほど考えて考えて、いくつかのことを見つけたって言った。 自分が傲慢で、いつも環境やそこにいた社会のせいにしてきたこと。ほんとは周りに支えられて来たはずなのに、人に感謝することを忘れていたこと。嫌なことには目をそむけて逃げて来たこと。自分がどんなに弱かったかということ。そういったことを、それを認められるようになるきっかけになったあることと一緒に、ゆっくりゆっくり話してくれた。それから言った。 このままじゃ、僕は前にも後ろにも行けないってことがわかった。いつもきみのこととふたりの関係を憂えんでいて、それでもそこに甘えていたと思う。恐くて考えることを避けながらも、甘えていた。考えて考えて、辿り着いたことは、「自分を愛せない人間は人を愛せない」ということ。自分を愛せないで、人を愛することなんか出来るはずがない。自分が幸せじゃなければ、人を幸せになんか出来ない。僕はひとりで幸せになる方法を見つけなくちゃいけない。ひとりで生きていけなければならない。僕はそこからやり直さなければいけない。それがようやくわかった。 そして、間を置いて、夫は言った。 「やり直すためには、はっきりさせなくちゃいけないと思ったんだ。」 「はっきりさせるって?」 わかっていながら、わたしは聞いた。 「離婚するっていうこと。」 夫は涙で声にならない声で言った。 わたしはずっと冷静に聞いていた。 「すごく傲慢な言い方かもしれないけど、あたしね、ずっとアナタにそういうふうに考えて欲しいと思ってた。」 ずっと冷静に、ひとつずつの言葉に、うん、うん、ってはっきり返事をしてたのに、そう言った途端に涙がこぼれた。そう言ったのは、夫が「離婚しよう」って言ったことに対してじゃない。なんで泣くのかわからなかったけど、悲しいからじゃなかった。夫が離婚を切り出してくれてほっとしたからでもなかった。 「わかってる。わかってるよ。」 夫は泣きながら、そう言った。 「考えてくれるね?」。夫が言って、「わかった」ってわたしは答えた。 涙がボロボロこぼれたままで、わたしは夫と朝まで話した。 外が明るくなって行くのと同時に、自分のこころからも闇が明けて行くような気がした。きっと夫もおなじ気持ちだったと思う。 熱がひどくなって、仕事に行けなかった。 -
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