幸せな離婚 - 2002年01月04日(金) 「自分を愛せない人間は、人を愛せない」。 電話を切ってから、夫の言葉を自分の中で繰り返していた。 自分を愛するっていうのは、自分がかわいいっていうこととは違う。 上手く言えないけど、それは自分を信じるっていうこと、ひとりで生きられるっていうこと、自分の力で生きていけるということ。ひとりぼっちで生きてくっていうのではなくて、人と関わり合いながらも、人と交わり合いながらも、自分を見失わないでいること。そうでなければ、必要以上に人に愛を求めてしまう。誰かの愛に頼ってしまう。自分を愛せないから、愛されることばかり求めてしまう。自分がかわいいのは、弱いから。強くなけれは自分を愛せない。 わたしは自分が強いとは思えない。ひとりでなんか生きていけないってしょっちゅう思ってる。いつでも誰かに支えて欲しがってる。それでも、自分の力で生きてかなくちゃって少しは頑張って来た。それだけのほんの少しの頑張りを、わたしは夫にも持って欲しかった。ふたりで生活していようが、人は誰でもひとりの人間でしかないんだから。そして、そんなふうに考えられない夫が、夫の将来が、別居したのにいつも心配だった。 誰かと愛し合うということは、誰かと暮らすということは、結婚するっていうことは、半分と半分がひとつになることじゃなくて、一人と一人がひとつになることなんだ。例えば、ブルーの円と黄色い円が重なったら、みどりの円になるように。それはいつでもブルーの円と黄色い円の重なりであって、それぞれの円がみどりに染まってしまうわけではなくて。そして、それぞれの円が自分の力で輝やいてなければ、素敵なみどりになんかならないんだ。 わたしたちは、ブルーの円と黄色い円に戻ろうとしている。 自分の色に誇りを持って、輝けるようになろうと思っている。 もう心配しない。夫はきっと夫らしく素敵なブルーに輝ける。 幸せな離婚。 そう、わたしたちは幸せな離婚をする。 ずっと恐かったのは、最初の離婚があんなに辛かったから。 あの娘のパパとママであることを、捨てきれなかったから。 夫が苦しむことにも、耐えられそうになかったから。 自分を偽ってここで生活してることをドクターにあんな形で否定されたときに、正直に生きるために離婚しようって決めたはずだった。それなのにまだ恐かった。 でももう、幸せな離婚を信じられる。 あのときの離婚とは違う。 わたしたちは別れるけど、別れなかったから出来なかったことが、別れるから出来るようになる。 夫婦としてではなく、お互いを認め合える。 一度は家族だった人として、大切に思える。暖かく思いやり合える。 あの娘のパパとママであることにも変わりはない。 いつまでも逃げ続けて、弱かったのはわたし。 夫は離婚という形を決心して、強くなるすべを見つけた。 もう弱っちくなんかないね。今のアナタは強い。辛いことを言い出してくれたこと、心から感謝できるよ。幸せな離婚はアナタのおかげだよ。アナタはもう、自分を愛し始めてる。わたしも自分をもっと愛せるようになるよ。強くなるよ。 長いこと長いこと話をして、お互いがずっと触れたくなかったものがきれいに溶けた。 ひとりずつで幸せになれるね。幸せになれるよね。なろうね。 もうすぐあの娘の命日。 ふたりで報告しよう。きっとあの娘は「よかったね」って微笑んでくれる。 -
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