天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

Look at me - 2002年01月08日(火)

もっと話していたかった。
あんまり安心して、わたしはちゃんと返事が出来なくて、
いつかみたいに何を言われても「うん」って言うのがやっとで、
涙ばっかりだーだー流れて、
拭っても拭ってもびしょびしょになって、

映画の話をしてくれてるあなたの声ずっと聞いてるうちに
くすくす笑えて来て、なのに、
なんてあったかいんだろうってまた涙がごぼごぼ溢れて来て、

なんだっけ? なんとかクロス?
トラボルタが、自分のせいで恋人が撃たれて死んじゃっておかしくなって、
「彼女が死んじゃったら、あなたもおかしくなる?」って聞いたら
「なるだろうなあ」ってあなたが言った。

ちょっと悲しかったけど、ほんとはそれが悲しかったんじゃなくて、
いつからこんなに大人っぽい声だっけ、なんて思ったらまたぐしょぐしょになって、
でも、彼女は幸せだなあ、って思ったらもっとぐしょぐしょになって、

「でもわからないよ。そうなってみないと」って、黙ってるからあなたがそう言い出して、
「きみだってわかんないだろ? もし明日痔になったらどんな気持ちになる?って聞かれても、『ああ、うんこを気持ちよく出せるって幸せなことだったんだなあ』って思うかどうかなんて、今わかんないだろ?」ってバカなこと言うから、
まじめに「わかるよ」って答えたらまたどーどー涙がこぼれだして、

「でもきみが死んだら、僕は絶対おかしくなる」って取って付けたみたいに言うから
「うそばっかり」って笑った。

それから「仕事、行ってくるよ」って突然あなたが言って、
「やだ。もっと話してたい」って急にわたしの声が震えて、

とっくに泣いてること知ってるくせに、
「なんで急にそんなになるの?」って気づいてなかったみたいにあなたは言った。 
「消えたりしないよ。僕はここにいるよ。ずっときみと一緒にいるよ」。

なんでわかったの? 
かけるねって言ってくれた日に電話してくれなくて、
やっとかかって来たと思ったら、まだ風邪がひどいまんまで、ずっと長い電話出来なくて、
もうこのままあなたも遠くに行っちゃうのかもしれないって思ってた。

だからね、もっと話してたかった。

電話切ってから、ベッドの上に座ったまま毛布を頭から被って、
そばにいて欲しいよ、って抱きしめてもらえない自分のからだを自分で抱きしめて、
こんなに涙を流し続けたら、ひからびちゃうんだろうか、それとも、
水浸しになってふやけるんだろうか、って思いながら、

「Look at me」ってドクターの言葉を思い出してた。
「Donユt cry. Donユt be sad. Look at me. Look at me」って、わたしの両腕を両手に取って、繰り返してた。離婚してるって嘘ついて、ほんとはまだ結婚してるってどうしても言えなかったあのとき。

「こっち向いて。ねえ、こっち向いて」って、いつかわたしが泣いたときに、電話なのにあなたもそう言ってたね。

なんであんなにおんなじだったんだろうって、
いつもいつもそう思ってたこと、また思い出して、

わたし、もうほんとに離婚するんだよ、って、
ドクターにじゃなくて、ちょっとだけもう知ってるあなたにそう言いたくて、
だけど言いたくなくて、

ただ、もっと話していたかった。

からだの芯まで冷え切って、
寒いからなのか、心細いからなのか、どっちなんだかわかんないよ。
辛くないって決めたのに、それもわかんなくなっちゃったよ。

ほんとにどこにも行かないで。
「こっち向いて」って、また言って。
あなたの顔がちゃんと見える。
もう、あなたしか見えない。





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