離婚届 - 2002年01月12日(土) 昨日 FedEx の不在配達通知が来てた。 ほんとに来ちゃったんだって思った。 月曜日にもう一度配達してくれるって書いてあったけど、今日オフィスまで取りに行った。手にした封筒は冷たかった。冷たい封筒を抱えて、ものすごく落ち込んだ気分になった。 ホームディーポに、この間買ったクーラーカバーを返しに行った。キャッシュで返金してくれると思ったのに、ホームディーポのカードで返された。高速間違えて全然違うとこ行っちゃって、ぐるぐる回ってやっと着いたのに、ますます落ち込んだ。 ホームディーポの駐車場で FedEx の封筒を開けた。 書類はていねいに書類ばさみに入れてあった。 見覚えのあるあのつるつるした用紙に、見慣れた文字が記入されてた。 わたしが記入するところをえんぴつで囲ってあった。 「婚姻前の氏に戻る者の本籍」っていう欄があって、「もとの戸籍に戻る」と「新しい戸籍を作る」っていうのをどちらか選ぶ。こんなのあったっけって思う。 新しい戸籍、どこの住所にしようかってぼうっと考えてた。 入籍したとき、「こんな紙切れ」って思いながら、ふたりの名前が並ぶ「そんな紙切れ」が嬉しかったことを思い出した。最初の結婚のときは、もっと重々しい気持ちで受け止めてて、「ほんとにここにはんこ押しちゃっていいのかな」って心配になったりしてたけど。戸籍の「筆頭者」ってところを、「どっちの名前にする?」「じゃんけんで決める?」って冗談言ってふたりで笑ってた。「僕は『筆頭者』だから」って、夫はしばらくジョークにしてた。 名字をどうしようか、ってまた考える。 生まれたときの名字に戻るのはいやだ。変な名字だからってのもあるけど、過去に後戻りするみたいでいやだ。今のままが一番便利だ。でもそれでいいのかな。よくわかんない。 そんなことあれこれ考えて、また落ち込む。 何落ち込んでるんだろ。なんでこんな気分になるんだろ。全然わかんない。 ひとつだけ、離婚なんて2回もするもんじゃないって、それだけはわかった。 封筒には、書類ばさみにきちんと収まった書類以外に、なんにも入ってなかった。メモ書きさえ入ってなかった。 今日は電話は出来ないはずだったのに、あの人はかけてくれた。 なんだか口が重くて、明るくなれなかった。 「どうしたの? なんか変だよ」ってあの人が何度も言ってた。 離婚届のこと、言いたいけど言いたくない。「これでフリーになるから、堂々と男探せる。もう嘘つかなくていいもんね」って離婚すること言ったときに笑ったら、うん、いやダメ、ってあの人は笑わずに返事をして、「なんて言ったらいいのかわかんない」って言った。今は自分がなんて言ったらいいのかわかんない。自分の気持ちがわからない。 あの人の月曜の晩まで電話出来ないって言ってたのに、今日帰って来たらまたかけるって言ってくれた。「ホントに?」「うん」「絶対?」「うん」「絶対って言って」「絶対かけるよ」「絶対ほんと?」「ほんとだって」「約束して」。 「約束するってー」。 あー違うじゃん。「ってー」は余計だよ。聞きたかったあの「約束する」、聞けなかった。作戦失敗。 あの人の名字を自分の名前の頭に付けてみる。おかしい。ぜんっぜん合わない。あの人にだって似合わないもんね、あの名字。あの人じゃないみたい。わたしには名前だけでいい。名前を呼べるだけがいい。 彼女の名前、知らなくてよかったって思った。 -
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