獣医さんに行く - 2002年03月27日(水) お休み。 チビたちを予防接種に連れて行った。 ここに来てから初めて獣医さんに行く。 ケイジに無理矢理押し込まれたチビたちが、何事が起こるのかって顔で、 お行儀よくふたり並んで縮こまってる。 ここに連れて来たときは、隅っこにふたりでまるまったらケイジにずいぶん余裕があった。もう今はふたりでいっぱいいっぱいになってる。 「大丈夫だよ。注射に行くだけだよ。どこにも置いて来たりしないから」。 心配そうな顔にそう何度も言いながら、重たいケイジを車に乗っける。 ごめんね。でもね、来週の週末からはアニマル・インにお泊まりなんだよ。 ふたり一緒だから、淋しくないよね。大丈夫だよね。 ほんとはあの街にチビたちも連れて行きたいけど、 5時間のフライトをまた荷物と一緒に真っ暗なカーゴに入れられるのは可哀相すぎる。 一週間後にまた5時間かけて帰ってくるのもチビたちの体に負担がかかりすぎる。 向こうじゃエミリアんちに泊めてもらうのに、「ねこたちも一緒に泊めて」とは言えなかったし。 ずっと前に一度下見に行ったアニマル・インは、とてもいいところだった。 おんぼろな、シェルターみたいなとこだったけど、スタッフの人たちがとても暖かかった。動物をほんとに愛してる人は、わかる。それに、おんぼろだけど清潔だったし、ちゃんとプロフェッショナルに動物を扱ってた。ここなら信頼出来るって思った。 獣医さんも暖かかった。腕のいい獣医さんは、チビたちの方がわかる。反応で示す。腕がよくても悪くても、獣医さんはみんな暖かいとは思うけど、動物は自分の体を預けて間違いない相手を本能的に選ぶような気がする。 久しぶりの獣医さんは、動物病院の匂いがなつかしかった。 お薬と消毒液と餌と動物の匂いが混ざって、それがなんとも言えないいい匂いなのは、そこで働く人たちが作る独特の空気のせいだと思う。 ドクターの手はとても人間の手とは思えないほどに、上手に器用になめらかにチビたちを扱った。それはほんとに魔法使いの手みたいだった。優しい魔法使いの手にかかって、チビたちが目を線にして躯をしならせる。 人間相手のドクターとは違うなあって、そう思った。 人間のドクターが人間を好きだとはあまり思えない。 帰り道にあるアニマル・インに寄る。 予約を確かめて、チビたちに「ここにお泊まりするんだよ」って見せるために。 大丈夫かな。大丈夫かな。ふたりともこんなに甘えんぼなのに。 わたしが心配しちゃだめ。そう思うけど、少し心細くなる。 そしてあの街に行くことが、心細くなる。 何が心細いんだろう。 なんで心細いんだろう。 わかんない。 きっとほかに理由があるんだ。 ほかにもっと心細いことがあるんだ。 「プルッ」をやっとつかまえて、今日もひとことだけの電話だった。 -
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