天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

ルームメイト - 2002年04月19日(金)

「7月に引っ越したらほかの人と一緒に暮らすの。だからもう来られないよ。」
「誰? 誰と? だんな?」
「違うよ。」
別れたじゃん、もう。
「ドクター?」
「ううん。」
ドクターもとっくに終わったじゃん。
「じゃあ誰? 病院の人?」
「うん。」
「・・・。」
「あたしが誰かと暮らしたら悲しい?」
「悲しいよ。そんなこと初めて聞いた。ショックだよ・・・。」
「言ったじゃない。」
「引っ越すってのは聞いたけど、誰かと暮らすなんか聞いてない。」
「決めちゃったの。あなたが来てくれないから。」

あの人にそんなこと言ったのは、もう4日前のこと。相変わらずあの人は時間がなくて、すぐに電話を切らなくちゃいけなくて、「もっとちゃんと話聞きたいから、電話するよ。3日以内にはかけるから。ちゃんと話してくれる? くれるよね?」ってあの人は淋しそうに言った。


嘘じゃなかった。親元離れたいジェニーが、一緒に住もうよって言った。
それも悪くないかなって思い始めてた。
ツーベッドルームのアパート借りたら高いけど、シェアするなら今より家賃が浮くし、ジェニーとなら上手くやってけそうだし。

それに、もう会えないなら、あきらめるのに理由が必要だと思った。
理由を作って、あの人が来てくれることをあきらめたい。
いつのことだかわかんないまま、ただただ会いに来てくれる日待ち続けてぐじゃぐじゃなばっかの、まるで中島みゆきみたいなこんな生活から脱出したい。しなきゃ。

わたしは誰かと暮らした方がいいのかもしれない。精神衛生上きちんと生きるために。
毎日お料理して一緒に食べる相手がいて、バカなおしゃべりも深刻な話も出来る相手がいて、テレビもビデオも見て、お休みに一緒に出掛けたり友だち呼んでパーティしたりして、そんなごく普通にちゃんとした生活。男と暮らすのとは違う意味の共同生活。ジェニーがシェアを言い出した少し後から、考え始めてた。そうすればもう、あの人がいつでも来られるように準備してるような哀しいひとり暮らしを断てる。

それまで絶対住むとこを友だちとシェアするなんて考えられなかった。だから、「7月までに恋人が見つかんなかったらね」って、そのときはちょっとジョークにして返事を濁した。「えー? あたしはセカンド・プライオリティなんだ!」ってジェニーは口を尖らせたけど、わたしよりうんと若いけどちゃんとマチュアで、不思議なくらい気が許せるあのジェニーとなら、出来そうだなって最近思えて来てた。お互いに自分のプライベートな時間を一番大事にしながら、お互いのプライバシーを尊重し合いながら。


男と暮らすふりしたのは、いつものただのバカな意地悪。
バカな意地悪だけど、ずっと男と暮らすふりしてやろうって思った。

会いに来てくれないからだよ。会いに来てくれなかった罰なんだから。

昨日で3日が過ぎたけど、まだ電話はない。
電話がかかって来たら言おうって決めてた。
「あなただって、もうすぐ結婚するじゃない。あたし、あなたが結婚する前に、誰かと一緒に暮らし始めたかったの」。

男だなんて、わたしひとことも言ってない。
あなたが勝手に思い込んだんだからね。

今日までそう思ってた。
今日までそう思ってのに。






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