もう一度初めから - 2002年05月06日(月) ドアミラーに映る風景はなんであんなに綺麗なんだろうね。 露出が少しアンダーな映像みたいに、 見慣れたはずの街並みが、深みを帯びてつややかに、まるで別の世界みたいに映し出されて 小さくなって後ろに飛んでいく。 消えて行くと思うでしょ? 違うの。消えないの。 限りなく限りなく続いて行くの。 でも見えなくなると思うでしょ? 違うよ。そんな気がするだけ。 振り向けばそこに、いつもの街がいつもの顔して佇んでる。 そこに街がある限り、 ドアミラーの中の映像は続くの。 たとえ街が姿を変えても、 ドアミラーの映像は、同じように景色を変えて続いてく。 正面を見れば、シティの高層ビルの塊が、空に向かって突き立っている。 りんと、背筋を伸ばして自信ありげなビルの塊は、だんだん大きくなって 手招きしてるみたいで吸い込まれたくなるけど、 ウィンドシールドのスクリーンの左下の隅っこで 小さなドアミラーのスクリーンが映し出す映像が、わたしにはこんなにも素敵。 振り返ってるんじゃないんだよ。 前を見てるんだよ。 前を見ながら、前に進みながら、 後ろに飛んでく風景を眺めてるの。 幻じゃなくて、偽物じゃなくて、 過ぎて来た街がただ美しく再現されてるの。 「今日何の日か知ってる?」 「大人の日。」 「何それ? 子どもの日のあとだから?」 「うそうそ。知ってるよ。」 「何の日?」 「会った日。」 「違うよ。会った日じゃないよ。」 「会った日だよ。きみと、出会った日。」 あなたの言葉は変わらずに さりげないのに息をのむほど突然わたしを幸せにしてくれて、 あなたが大事なことも あなたを愛してることも 色褪せずにずっとおなじだけど、 日常に紛れ過ぎて、少しだけ当たり前になっちゃってたみたいな気がする。 もう一度初めからあなたを愛したい。 もう一度初めからあなたを大事にする。 振り返らずに、立ち止まらずに、うんと前の方ばかり見ずに、 2年分の風景と一緒に もう一度初めから。 -
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