社長と秘書ごっこ - 2002年05月08日(水) 大発見。 コネティカットのが上手く行きそうになくて、もうダメかなと思ってたら、 すごいとこ見つけちゃった。 シティにあった。めちゃくちゃ大きなところ。 平日のお休みは当分ないから、行ってみるなら今日しかない。 電話したら、来て下さいって言ってくれた。 シティの手前で事故があったらしくて、いつもの電車が途中でストップする。 乗り換えた初めての地下鉄の線が、新鮮でワクワクした。 知らないことがまだまだいっぱいあるこの街。 「シティ行きはこれでいいんだよね?」 「タイムズスクエアはどこで降りるの?」 駅に停まるたびにキョロキョロしながら、隣りの男の子に聞きまくる。 「五番街」のサインが目に入って立ち上がる。「タイムズスクエアは次だよ」って男の子が言ってるのに、「あたし、ここで降りるの。ありがと、バイ」って慌てて飛び降りた。 振り返ったら、男の子が肩をすくめた。完ぺき変なやつにされた、わたし。 ドアが閉まる寸前に、一緒に乗り換えたおねえさんがあとについて飛び出してきた。 いいのかな。ここ、五番街なんだけど。 外に出たら見慣れた界隈だったけど、行き先は20ブロックも先だった。 バスに乗ろうか、地下鉄乗り継ごうか、考えた挙げ句、歩くことにした。 細いチャイニーズランドリーのサンダルが、不格好なわたしの足に痛くなる。やっぱりバスに乗ればよかったかなって冷や汗さえ出てきたころ、大きなビルの前に翻るロゴ入りの旗が目に入った。 オフィスの人は親切だった。今日ショールームを開けてた業者の人を紹介してくれて、いろいろ話が聞けた。すごいすごい。すごい収穫。 やった。やった。 嬉しくて、報告したくて、今日は約束の日じゃないけど電話した。 「明日僕からかけるって言わなかった? 今ちょっとマズイ」。 囁き声であの人が言った。ドキッとした。彼女が一緒なのかなと思った。 「彼女といるの?」。おそるおそる聞いた。 「違う。ミーティング中。」 「あのね、例のヤツ、大発見したの。報告しようと思って。マズかったら明日にする。」 「いいよいいよ、話して。何?」。 ミーティングの場所からうんと離れたのか、こういう話だからいいと思ったのか、あの人は普通の声になる。 焦って話そうとして、上手く言えない。専門用語の日本語がわかんなくて、えっとえっとって言いながら、しょうがないから英語の単語をそのまま日本語の発音にして混ぜる。やだやだ。こういうしゃべり方するヤツ嫌い。そう思うとまた焦って、上手く説明出来なくなる。なんかすごい時間かかったけど、あの人は一生懸命聞いてくれて、「今ちょうどミーティング中でよかったよ。これからそれみんなに報告するよ」って、救われること言ってくれた。 こういうとき相変わらずあの人は冷静で、淡々と次のステップとか話すから、「誉めて誉めて。あたしえらい? よくやった?」って混ぜっ返す。「うん、えらいえらい。ちょっと待って」。いつものあの人に戻ってそう言って、キスを3回くれた。 「やった。誉め誉めのキス?」 「そ。じゃあさ、ミーティングに戻るから。明日電話するよ。」 「わかりました。社長、頑張ってください。」 「もいっかい呼んで。」 バカなんだから。 「社長、好きよ。」 「うむ。・・・今の、社長っぽかった?」 「うんうん。あたし、秘書だからね。」 「わかった。秘書にしてやるよ。」 電話を切ってから、もらって来たカタログに載ってる業者のウェブアドレスに片っ端からアクセスする。やらなきゃいけなかった自分のことなんか、まるで出来てないのに。来るのかな。来るのかな。これで来られるようになるのかな。 来てくれたら、社長と秘書ごっこしかないね。 そんなこと考えながら、もう来てくれる日のこと空想してる。 会えなくても、会えなくても、あなたのために出来ることがあるだけでいいよ。 うそ。やっぱり会いたい。 -
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