留守電 - 2002年05月10日(金) ジェニーとごはんを食べに行った。 ごはんのあと、スターバックスが入ってる本屋さんで雑誌を3冊手にしてコーヒー飲みながら、 「美しいお肌を保つ秘訣」のページの紫外線撮影の顔を見て「あたしもコレかもしれない」ってふたりでぞっとしたり、 リッキー・マーティンの赤ちゃんの時の写真を「めちゃくちゃかわいい」とか「別にふつう」とか言い合ったり、 「ロシア系のドクターは何故あんなに意地悪なのか」とか「女のドクターはなんであんなにエラそうでウルサイのか」を討論したり、 ヴィクトリアが4回も国家試験に落ちてる理由を分析して、どうやって勉強のコツを伝授するか決めたり、 ドリーンのおしゃべりが止まらないワケを探って、でもあれはもうどうしようもない、だけどドリーンはものすごく心のあったかい子で人を助けるのにどれだけ一生懸命か、ってことを例をひとつずつ挙げて認め合って賞賛したり、 肝臓疾患の治療について今日診た患者さんをケーススタディにして議論したり、 お互い次の目標を達成するために今何を始めるべきか見解を述べ合ったり、 それにしても Dr. ラビトーはあのビッチな Dr. カプリンをほんとに愛してるんだろうか、悔しいけど愛してるんだよ、でもフランチェスカは「ただの友だち同士だよ」ってムキになってるよ、人知れずいいところがあるんだよ、例えば? ぜんっぜん思い浮かばないけどさ、人知れずいいとこがあったって患者さんに対するあの態度は許せない、まああの完ぺきな Dr. ラビトーには似合わないけどねアンタの方がまだ似合う、まだって何よ、って、人の恋路を詮索して笑ったり怒ったり、 周囲に憚らず大声でおしゃべりしてたら、いつの間にかお店の人が椅子を逆さにしてテーブルに乗っけ始めてた。時計を見たら、12時5分前だった。 帰り道であの人のことを考える。ジェニーにだってあの人のことは話せない。 うちに帰ったら、本棚の本がバラバラと無惨に床に落ちていた。チビたちの反抗だ。こんなに遅くなるはずじゃなかったんだよ、ごめんね。慌ててごはんをやったら、足元にふたりしてじゃれついて離れない。留守電のランプがついていた。 「えっとぉ、かえってきたらでんわくださぁい、じゃねー」って、また小学生みたいなメッセージ。 電話をかけたらあの人は友だちといて、自分が聞いてわたしが答えたことを友だちに伝えてる。この電話の主のことを、友だちになんて言ってるんだろう。あの人を取り巻く世界にも、わたしは存在しないはずなのに。 「ゆうべ必死で帰って来て電話したんだよ。もう仕事に行ってた?」って拗ねた声で言う。 「明日の朝レコーディングあるからさ、起こしてー」って甘えた声で言う。 友だちがいるのに平気なの? あの人の日常とわたしの日常が、海を隔てた遠い遠いところにあって、 昼と夜が逆さになったふたりの毎日が、誰にも見えない細い細い電話の線で繋がってる。 誰にも見えない、誰も知らない、細い細い電波の橋。 もしもうんとこの先、自分にさえ信じられなくなったとき、 留守電のテープに残った声だけが、確かな証になるね。 テープを巻き戻してあの人の声を聞く。 おかしいんだってば、その喋り方。涙が出るよ。 -
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