天使の季節 - 2002年05月15日(水) スタジオ兼お店兼会社兼の新しい仕事場。 改装工事を外注するお金がないから、仲間みんなと全部自分たちでやるらしい。 ゆうべは徹夜でペンキ塗りで、天井を塗ってる間に白いペンキポトポト顔に落ちて来るから、「ガンシャ、ガンシャ」ってみんなで面白がってたってバカ言ってる。 「いいなあ、ガンシャ。」 「僕は別によくないよ。」 いいなあ、そんなふうなの。ガンシャじゃなくて、お金ないから自分たちで改装。 ペンキ塗りしながらはしゃいでる天使が見えた。 スーツ姿はどんなに頑張ってもあやふやだったけど、 顔に白いペンキくっつけて、天井までヒュンと飛び上がって、真剣な顔してペンキ塗りしてる天使なら簡単に見える。 わたしの大事なその翼にまで、ペンキつけたりしなかった? 徹夜でペンキ塗りしたのに、これから会社の取引先の人と打ち合わせに行くって、電話しながら着替えてる。待ち合わせの場所まで乗るタクシーの中でも、電話を続けてくれる。「覚えてる?」って、一緒に行ったあの場所の名前をあの人は言う。その場所に着いてタクシーを降りたら「あ、もう来てる」って言うから、「『コンニチワ』の代わりに『ガンシャ』って言って」っ言ったのに、返事しないでケタケタ笑ってる。「ねえ、言ってよ。絶対わかんないって。取引先の人、コンニチワって言ったと思うって」。もう一回そう言ったのに、またケタケタ笑って、「行ってくるよ」ってキスしてくれた。ガンシャ言えないのに、キスはいいの? 日が長くなった。 夜の8時になってもまだ明るい。 風もあたたかくなった。 窓を開けて走る車の FM のステーションから、懐かしい昔の曲のリミックスが流れる。 すれ違った車の窓からおんなじ曲が聴こえてきて、すれ違ってる時間だけ曲が重なる。 今日は忙しい一日だった。1時間半いつもより遅くなったけど、帰り道で見つけたそんな季節が嬉しくなった。 天使の季節が来るね。 あの人は冬の方が好きって言うけど、 わたしは夏のはじめの天使が好き。 覚えてるよ。 あの時も、あなたのうちからタクシーに乗って行った。 覚えてるよ。 今あなたが降りたところ。 覚えてるよ。 先に降りたあなたが、はにかんだ微笑み見せて手を差し出してくれた。 覚えてるよ。 少しだけ先に歩いて、振り向いてはおしゃべりして、首を傾げて笑ってた。 覚えてるよ。 光の中でいつもまぶしかった笑顔。 夏のはじめの天使が好きよ。 -
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