天使に恋をしたら・・・ ...angel

 

 

やっぱり切れない - 2002年06月02日(日)

あの人が電話をくれた。
アメリカに来てた。
昨日までレコーディングで忙しかったって言ってたから、2日くらい前にはもうアメリカにいたみたい。空港に着いてから電話したけど繋がらなかったって言ってた。ずっと話してないみたいな気がした。なつかしかった。まるで、うんと前に別れた恋人からの電話みたいだった。
アメリカにいるあの人を想うのは嬉しい。
おんなじ国にいるってだけで、嬉しい。
優しかった。アメリカにいるあの人は、何故か違うふうに優しい。
何度も「元気?」って聞いてた。
あんまり元気じゃなかったけど、わたしも優しくなれた。


昨日、ジェニーが誘ってくれて、踊りに行くことになった。
25歳以上の年齢指定のクラブってジェニーの友だちから聞いてたお店は、クラブっていうよりダンスフロアのあるレストランだった。取りあえず食べることにした。食事は予定に入ってなかったけど、踊るより食べるのがメインの場所じゃあ仕方ないし。

ロシア系の美形ウェイターが仰々しく並べ立てる今日のスペシャル料理を最後まで聞いたのに、アントレをすっ飛ばしてアペタイザーとデザートだけ注文した。凝った盛りつけのアペタイザーは、綺麗で美味しかった。お上品な量だったけど、食べたらそれだけでおなかいっぱいになるくらいボリュームがあった。

結局踊らなかった。
オールディーズの音楽は果てしなくオールディーズだったし、聴いてる分にはいいけどフロアに出る勇気がなかった。「こういうとこで踊ると肩凝るよ」って言いながら、踊らないでおしゃべりを続けてた。

ジェニーの大学時代の友だちって子が、妹の白人バージョンだった。ほんとによく似てた。おしゃべりしながら、普通に元気だった頃の昔の妹のことを思い出してた。あれから連絡がない。引っ越し先の電話番号をわたしは知らない。ちゃんと元気でやってるんだろうか。母からも電話がない。母の引っ越し先もわからない。わたしが引っ越しちゃったら、もう連絡の取りようがなくなる。このままお互いの居所がわかんなくなっちゃうんだろうか。母とも妹とも、もう切れちゃうんだろうか。前の住所に手紙を出したら、新しいとこに転送してくれるんだろうか。わかんない。

80ユs とか 70ユs の曲の話をしながら、「今の音楽はなんて呼ばれるようになるんだろうね」「ミレニアムズ?」「ミレニアミーズ?」なんて言い合う。もっと経ったら未来の音楽が 30ユs とか 40ユs とかって呼ばれるようになって、未来の 50ユs が今の 50ユs とごっちゃになって「どっちの 50ユs ?」なんて聞くような人は誰も生きていない。でももしかすると、未来の 50ユs は今の 50ユs おんなじような音楽なのかもしれない、とか、段々ややこしくなる。

別のお店に踊りに行くことになったけど、ジェニーが急に具合悪くなっちゃって、やめて帰った。「悪いよ」ってジェニーは言ったけど、熱っぽい顔して体がだるいって言ってるのに踊りに行くわけにいかない。


アップタウンはちょっと痛かった。「思い出しちゃうよ」って言ったら、ジェニーに呆れた顔でバカって言われた。この間電話があった話をしたときも、怒った。「ジェニーったらまだ怒ってるんだ、ドクターのこと」「当たり前でしょ? アンタあのときどんなになってた? ずっとごはんも食べられなかったじゃん。アンタをあんなにしちゃったヤツだよ?」。だからもう何も言えずに、車の中から街並み見ながら、ひとりであの頃の会話を断片的に思い出してた。


あの人からの思いがけない電話が嬉しくて、そのあと魔がさしたみたいに、ドクターのペイジャーの番号を回してた。わたしの中で、今だにどこか重なってるんだ。ドクターはすぐに電話をくれた。まだこの街にいた。 LA には来月行くって言ってた。電話が解約されてた理由は聞かなかったし、新しい番号も聞かなかった。多分ドクター用のアパートの契約が終わって、最後の一ヶ月を別のところで暮らさなきゃなんなかったんだろうなと思う。ドクターも「元気?」って何度も聞いてた。仕事中だったみたいで、10分ほどおしゃべりして切った。「また電話するよ」って言ってた。

もうきっと会うこともない。
でも、こんなふうに切れていくなら、いい。
友だちになれなくても。

あの人は?
多分もう会うことはない。
9月には絶対行くからなんてまた言ってるけど。
でも、やっぱり切れない。切れない。

あの人の結婚がちゃんと決まったときに、
もう一度考えよう。


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