猫と犬が降ってる - 2002年06月15日(土) お昼休みに外に出ようとしたら、「すごい雨だよ」って外から帰って来たエマが言う。 「そんなすごい?」 「Cats and dogs!」。 ドリーンが「うちのおばあちゃんがよくその言い方してた」ってケラケラ笑った。 エマは、40前半に見えるけどほんとは60をとっくに越えてるナイスレディーなセクレタリー。あれって昔の言い方だったんだ。そう言えば実際に使われてるとこ、初めて聞いた。 「あたし日本の高校で習ったよ、その言い回し。」 「そっか。アンタ日本で英語習ったんだ。」 「ヤな言い方ってアタマに来てた。」 「なんで?」 「猫と犬が空から降るんだよ。みんな地面に撃墜して死んじゃうよ。残酷過ぎるよー。」 ドリーンとジェニーが笑う。 「そういうところに行く着くか。だめだよ、メタフォーをそういうふうに捉えたら。」 「じゃあどういうふうに捉えればいいの?」 「そんなの見たことない、想像もつかない、あり得ない、それほどどしゃ降りなんだなあ、って思わなきゃ。」 「そうなの? 見たことないほどってことなの? じゃあさ、猫と犬じゃなくたって何でもいいんじゃん。魚とゾウでも。」 「Itユs raining fish and elephants? う〜ん、ちょっと違う。ピンと来ない。」 「そっかなあ。結構よくない?」 そういうので昔はちょっと疎外感を感じてた。大人のなかに混ざった子どもみたいになる。わたしだけにわかんないこと、って。 昔のテレビ番組の話題とかになっても、わかんなくて淋しいなって思ってた。 今は平気になった。 何それ? なんでなんで? って子どもみたいに聞いても、とんちんかんな返事をしても、みんな笑いながらちゃんと教えてくれるから平気になった。 だけどひとりぼっちには慣れない。 いつまでたっても慣れない。 ひとりで街を歩いて、 ひとりでカフェに座って、 ひとりで車を運転して、 ひとりで音楽を聴いて、 ずっとそうやってひとりの時間を過ごしてるのに、慣れない。 胃がきゅうっと捻れたまんまで、その痛みに慣れない。 この広い国のどこにも家族だっていやしないけど、 書類の「緊急連絡先」の欄に書き込む名前も住所もないけど、 そんなことは多分大したひとりぼっちじゃない。 大好きな人がいて電話で声が聞けるけど、 何をしてても遠い遠いその人を想ってる そういうひとりに慣れないよ。 「『猫と犬が降ってる』なんて、ひどいよね」。 そう言いながらチビたちを抱き上げて、 顔の真ん中くちゃくちゃにして耳をへしゃげてるのに、キスしまくる。 週末は嫌いだ。 -
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