願いごと - 2002年07月06日(土) 「誰かいるの?」 「いるよ。」 「誰がいるの?」 あの人の携帯はまた調子悪いらしくて、やっと繋がった車の中。 人の気配がしてそう聞いたら、あの人は「仕事仲間のピカくん」って言った。と思った。 「ピカくん?」って聞き直したら「おい、ピカくんになってるよ、おまえ」って誰かに言うのが聞こえて、ふたり分の笑い声が聞こえて、あの人はわたしにその人の名前を言い直したけど、やっぱり「ピカくん」に聞こえた。 これから運転するから、って言うあの人に、「やだ。せっかく繋がったのにぃ」って甘える。ピカくんが一緒だし運転するからしょうがないかってホントはしおらしくそう思ってたのに、「わかったわかった。いいよ、このまま話そ」ってあの人は言った。 ピカくんがいるのに、運転してるのに、ずっとおしゃべりしてくれる。あの人はピカくんも会話に交えて、時々ピカくんの声が横から聞こえる。 「着いた。これから車停めるからさ。今日の夜また電話してよ、今日また徹夜だから。かかんなかったら何回もかけてみて。もしダメだったら、明日の夜僕からかけるから」「ねえ、ピカくんはこの電話誰からだと思ってるの?」「知ってるよ。ニューヨークの友だちって」。 知ってるの? 用事もないのに今日も今夜も明日も国際電話でおしゃべりする友だちのこと? 子どもじゃないんだからピカくん分かるはず。でもあの人は、間違い電話のふりして切ったりしなかった。それだけで嬉しかった。秘密だけどちょっとだけ秘密じゃないみたいで。「ねえねえねえ」「わかってるよ、言おうとしてること。だめだめ。ソレはだめだって」。あの人は笑う。「ねえ、お願い」「きみだって病院からかけてくれたとき、そばに同僚がいるからってしなかったじゃん。覚えてるんだよ」「やだ、お願い」。 しょうがないなあって言って、じゃあちょっとそのまま待っててって言って、ピーピーピーピーって車をバックさせる音が聞こえて、少ししてあの人は、急いで5回続けてキスしてくれた。どうやってピカくんから隠れたんだろ。 あの人の夜になって電話したけど、やっぱりかからなかった。 かかんなかったら明日の夜かけてくれるって言ってたのに、さっき電話くれた。あの人の朝6時ごろ。今帰って来た、また風邪ひどくなったから今から寝るって。夜こっちからかけるよって。 「日本は今日何の日か言って?」 「何? わかった。会った日。きみの来日記念日。」 「違うよ。そんなのとっくに過ぎたよ。」 それは6月だったのに。 「わかった。七夕。」 「そう、七夕だよ。」 「七夕だね。」 「あたしなんか一年に一回も会えない」って言ったら、「去年もおんなじこと聞いた」って言われちゃった。 あの人の七夕が終わる前に電話して欲しい。 お願いがあるから。キスじゃないの。 一年に一度だけ、七夕はわたしのことだけ愛してくれる日にして。 ピカくんにも誰にも内緒でいい。 -
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