ほかの誰でもない - 2002年07月20日(土) お昼頃かけてって言ったあの人に電話する。 「今日も花がたくさん届いたけど、やっぱりきみのが一番デカい!」。 まだ言ってる。 「デカい」ばっかり強調するから、一体綺麗なのかどうか聞いてみたら、大きな南洋植物の葉っぱが敷いてあって、真ん中にふきのとうみたいのが突き立ってて、そのまわりに色んな花が詰まってて、って、なんかあんまり綺麗そうじゃない。ふきのとうみたいのって何だろ。まあいいか。ちょっとショックだったけど。 新しい仕事は滑り出し快調みたいで、「昨日も徹夜で疲れた〜」って言いながら声が弾んでた。嬉しい。 明日はグロリアの旦那さんが大きなバンでベッドやらテーブルやらを運んでくれる。 「このお部屋でこのベッドで寝るの、今日が最後なんだ。だからね、抱っこして」。 あの人は仕事中なのに、わたしはそんなことを言う。 目をつぶって、あの人の胸にからだごともたれかかるふり。あの人が腕に抱き締めてくれるふり。 眉間のところがつんとして、電話の向こうのあの人の気配以外何も聞こえなくなる。 何かにふわあっと包み込まれたみたいになって、「ふわあ」がゆらゆら揺れている。 ずっとなかったね、コレしてもらうの。でもわたし、まだこんなに上手く出来るよ、「ふり」。 ベッドカバーをぎゅうっと握りしめたとたん、涙が一気に溢れ出た。 涙を拭いて窓辺でたばこを吸ってたら、駐車場から男の人がふたりアパートの裏口に歩いてくるのに気づいた。暗くてよく見えなかったけど、片方のひとりがこっちを向いて手を振った。カダーだった。 少しして玄関でノックが聞こえた。もう遅いから来ないと思ってたのに。ドアを開けたら、「Hi」って笑って立ってた。嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。 「今帰って来たの?」 「そうだよ。」 「一緒にいた人、ルームメイト?」 「新しいルームメイト。今のじゃなくて。そいつはね・・・」 話をしながら、カダーはわたしを抱き寄せて、わたしはカダーの背中に腕を回す。 胸に顔を埋めて、大きく息をする。 代わりじゃない。代わりじゃないよ。 あの人の代わりでも、ドクターの代わりでもない。 もうあの人を重ねたりしない。あの人とは全然違う。 おんなじ背の高さでも、ドクターを重ねたりもしない。 カダーはほかの誰でもないカダーで、 ほかの誰でもないカダーをわたしはとてもあったかくていい人だと思い始めてる。 ドクターの言葉はいつもいつもあの人とおんなじだったけど、 カダーの言葉はほかの誰のでもないカダーだけの言葉で、 わたしはカダーとおしゃべりするのがとても好きになっている。 わたしね、さっき窓辺でカダーが帰って来るのを待ってた。 今日は遅いって言ってたからまだ帰って来そうにないなって思いながら、 早く帰って来たらいいのにって、待ってた。 あの人もわたしからの電話を、こんなふうに待ってくれてるの? 彼女とは全然違うわたしとおしゃべりするのが、こんなふうに好きなの? -
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