一橋的雑記所
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2005年12月06日(火) |
続きました。※二回目。ホントは060503. |
しずなつ徒然小話書き書きです。 でも何処まで書けるかちぃとも分かりません…(ヲイ)。
久し振りに足を踏み入れたその部屋は。 いつも以上に何だか綺麗に片付けられていて。 記憶の中にあった細々としたものが無くなっていて。 そうか、彼女はもう直ぐ此処を出て行くのだっけと。 当たり前の事を改めて教えてくれるようだった。
「直ぐ支度するさかい、ちょっと待っててな」
そういって、キッチンの方へ向かった彼女の背中を見送ってから。 私は、ソファセットに腰を下ろした。 ビデオセットすら既に梱包済みなのか。 テレビ台の上段は開いているのに。 何故だか、いつも私がここで時間を潰す時に使っていた。 ゲーム機と数本のシューティングゲームのソフトだけが。 いつもどおりきちんと下段に収まっている。
「静留、これ……」
思わず振り返って叫び掛けた私に。 冷蔵庫の扉を開けながら彼女が微笑み掛ける。
「良かったら、なつきに貰ってもらお、思てるんよ。 うちひとりやと滅多に使いませんよってに」
何の含みも持たせない声音が却って、胸に差し込んできて。 私は慌てて、テレビの方に向き直る。
「……邪魔になるっていうのなら、貰ってやる」
思わず返した言葉が、更に自分の胸に突き刺さる。
「邪魔になるやなんて……思てまへんえ?」
私の勝手な物思いを、分かっているのか、分かっていないのか。 キッチンを行き来しながらそう返してきた彼女の横顔は。 とてもとても、静かだった。
綺麗な夢のその果てに・2
液晶の画面を行きかう色彩や。 耳を刺激する爆音や電子音に出来る限り意識を集中していたせいか。 できましたえ、と彼女が声を掛けてくれたその時まで。 私の思考は完全に停止していた。 攻略途中のゲームをあっさり諦めコントローラを放り出す。 途端に御飯の炊ける匂いや醤油や出汁や…そんな食欲をそそる匂いが。 一気に鼻腔をくすぐって、思わず胃の辺りに手をやってしまった。
「ちゃんと、手、洗ぅてな」 「……分かってる」
ぶっきらぼうに答えながらゲーム機とモニターの電源を落とし洗面に向かう。 手を洗うついでに、目元も水で冷やすようにして洗う。 こめかみから目の奥に掛けて重いような疲労感。 まだひんやりと冷たい水道水で何度も何度も洗う。 気が済むまでやってから手にしたハンドタオルは。 いつも通り清潔な日向の匂いがした。 学園内で姿を見かけなかった間も彼女は。 几帳面なその日常生活を崩す事は無かったのだと。 ぼんやりと考えていた。
いつもの事だけれども。 彼女に食事をご馳走になる度に、食卓を埋める料理の内容に圧倒される。 同級の友人も面倒見が良くて料理が得意だから。 そのルームメイト共々、夕食の世話になってはいる。 けれども友人が用意するメニューが比較的シンプルで。 たとえるならファミレスのディナーメニューとするなら。 彼女のは、まさに家庭料理と呼び得るそれで。 なんでこんなにきちんとした食事を用意出来るのかと以前尋ねたら。 実家に居た頃から自分が早くに亡くした母親の代わりに。 台所に立っていたからかと、さらりと答えられてちょっと反応に困った。 言ってしまってから彼女も、しまったと思ったのだろう。 料理は、得手不得手、あるもんやし、と。 さりげなく言葉を継いでくれたけれども。 ぼんやりとそんな事を思い出していた私の目の前に。 そっと、御飯がよそわれた茶碗が置かれる。
「何や、お疲れみたいやねぇ」
笑い含みでそういって、彼女は私の真向かいの席に着く。
「食欲、あらへんとかはない?」 「……それは、無い」
言って、両手を合わせてから箸を手に取る。 料理の方へと意識と視線を集中させながらも。 彼女の視線や気配にどうしても、気を取られる瞬間がある。 訊きたかった事や、話したかった事が、あって。 けれども、自分と彼女がこうして会える時間や機会は本当に。 本当に、もう、残り少なくて。 その事にじりじりと焦るような気持ちとはまた別な所で。 彼女を過度に意識している部分が、自分にはある事を。 こうして、二人きりでいる時にはどうしても。 自覚しないではいられないから。
「なつき、そんなんにまでマヨネーズ掛けたら、あかんえ」
笑い含みの声に制されて。 黒豆やら蒟蒻やら筍やらを上品に炊き込んだ小鉢に捻り出し掛けていた。 チューブを握る手を止める。
「うちの味付け、そんなに愛想ないのん?」 「ち、違…!ちょっと、その…ぼんやりして」
拗ねたような声と表情はいつもの冗談だと分かっていて。 反射的に、慌てて否定の声を上げると、彼女は楽しそうに笑った。
「そっちのサラダには好きなだけ掛けたらよろしいよ?」 「わ、分かってる…!」
水菜やら刺身のツマ並に細切りされた大根や人参やらが盛られた皿に。 遠慮なく、マヨネーズを捻り出す。
「なつき、鴇羽さんの作ってくれる料理にも、盛大マヨ掛けてはるねんてな」
更に楽しそうに続ける言葉に、思わず顔を上げる。 彼女は、穏やかに目を細めて私を見ている。
「なつきに会うちょっと前に会うて、久し振りにお話しさせてもろたんよ」
何でもない事のように続けて彼女は、味噌茶碗を手にしてそっと啜る。
「ええお友だちやね。うち、安心したわ」 「……何でそんな事で」
安心するのだと言い掛けて、口を噤み、箸の先でサラダをかき回す。 理由なんて本当は、良く分かっている。 ただ、時間に急かされてじりじりとする気持ちや。 祭りの前には無かった、彼女との間に生まれた距離への意識を。 わざとの様に思い出させる彼女の言葉が。
「堪忍な」
なぜ、謝る、と呟き掛けた言葉も、飲み込んだ。 それは、とても聞き慣れた彼女の言葉だけれども。 その顔に浮かぶのはいつもいつでも。 自分に向けられていた笑顔だけれども。 その裏側に存在していたものを知ってしまった今となっては。 それらがどれだけ、彼女の本当の心から遠いものか分かるから。
「……おまえは、いつも、そればかりだ」
やっとの事で零した言葉に、彼女の手が止まる。
つ、続く…のかな…?(汗) 後で書き直す可能性大(え)。
つーか。 食卓シーンの為に。 京のおばんざい関連を頑張って検索した己が此処に居ますよー(何)。 全然役に立たなくて、おにゃか空いただけなのは此処だけの…(伏し目)。
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