一橋的雑記所
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2005年12月15日(木) |
段々と痛々しい事になってきました…何故(何故言われても)。※5回目。実は20060524.でもって0531に若干修正。 |
BGMは何故か、「Hungry Spider」。 多分、内容とは関係無かろうと思われ。 そんな感じで(どんな感じやねん)、5回目です。 時間的に余裕ないので、中断しつつ。 キリの良い所まで行けたら行こうかと思ったり。
つーか。
これ多分。 後で大幅に書き直すか。 全然違うのに差し変わるかすると思われます(滝汗)。 何か、ちょっと、流石に。 アレな感じになってきましたです……はい……(何アレって)。
060531.追記: 若干の軌道修正を行いました。 だからっつーて、アレな感じは少しも削げなかった気が。 (だから何よアレって)
どのくらい、そうしていただろう。 時折、近くの部屋や廊下から小さく物音が響くのが聞こえて。 その度に、何故だか夢の中に居るような気分になって。 自分の左肩に押し付けた、彼女の温もりに意識を集中する。 そうやって、実際には数分ほどの時間を過ごした後。 ずっと、身体を強張らせ、震え続けていた彼女は。 不意に、大きな息を深くゆっくりと吐くと。 諦めたように、その肩から力を抜いた。 同時に、左手首を抑え込んでいた彼女の右手が。 そっと、離れていく。 それを、私は。 何だか切ないような気持ちのまま。 視界の隅で、見送るしか、無かった。
綺麗な夢のその果てに・5
大きな吐息を一つ漏らすと彼女は、静かに身じろいだ。 離れ難い気持ちと、ようやく押寄せてきた自身の行動に対する困惑とが。 私の胸の中で、せめぎあいを起こす。
「……なつき」
その間にすっと入り込んできた彼女の声の静謐さに。 上っていた頭の血が、すっと降りる。
――追い詰められているのは、私じゃない……。
唐突に思い出して、それから、ゆっくりと腕を解く。 彼女は、私の当てたハンカチに添えた手はそのままに、そっと身体を起こした。 その顔はでも、やっぱり逸らされたままで。 乱れて頬に張り付いた髪が、その表情すら伺わせてはくれなくて。
「静留……」 「ほんま、あんた、無茶ばっかりやね……」
ぽつり、と、色のない声が、辛うじて見える口元から零される。 ほんのりと紅いその唇は、かすかに震えているように見えた。
「……ごめん」 「謝ることないけど……血ぃ止まるまで、ちゃんと抑えといてな」
空いた手で無造作に私の手を取ると、ハンカチの上に添えさせる。 そのまま何かを考える暇も与えず、彼女は、静かに立ち上がった。
「ま……静留……っ!」 「喋ったら、あかんて」
丁度一歩分の距離を置いて佇むとようやく此方に向けた、その顔に。 思わず、息を飲む。 彼女は、笑っていた。 笑いながら、一粒の涙も流さず、泣いていた。
「あんまり、酷い様ならお医者さんへ行かんとな。 綺麗な顔に、痕でも残ったらおおごとどすから」
そんな事を呟きながら空疎に目を細めて、背を向ける。
「ま……待て!静留……っ!」
慌てて身を起こした私を振り返りもしない。 その姿に、身震いする程の既視感を覚える。 瞬間、背中を駆け上がった何かを無理矢理抑え込んで。 私は立ち上がった。
「待て、話が……」 「喋ったらあかん、言うてますやろ……!」
思わずその手を取って振り返らせると。 彼女の厳しい紅い瞳に射抜かれる。
「し、ずる……」 「うちはもう、あんたをこれ以上傷つけとうない」
叫ぶように吐き出された声が静かに、胸元を叩いた。
「せやから、もうこれ以上……」
不自然に途切れたその声音が湛える。 これまで一度も聞いた事のない血の滲むような響き。 不自然な位穏やかなその声に打たれたように。 頬に血が集まるのを覚えた瞬間。 駄目だ、と思う間も無かった。 彼女の、胸元で握りこまれた両の手を強く掴み取るように引き寄せる。 当然、口元からハンカチが落ちる、けれども、構ってなどいられない。
「今更そんな事を言われたって、私は、聞けない!」
蒼白に近い顔に、真紅に近い瞳の中に走る、痛みの色を目に焼きつけながら。 私は、叫んでいた。 泣かせたくはないと、確かに思っていた。 悲しませたくはないと。 けれども、その気持ちさえ振り解くようにして、叫んでいた。
「お前が私の側から居なくなるのは、嫌だ……!!」
傷ついたその瞳を真っ直ぐに見据えて。 その痛みを与えているのは自分だと分かっていて。 それでも、叫ばずにはいられなかった。
「勝手なのは分かってる、だけど、私は嫌なんだ。 お前が居なくなるのだけは、絶対に……!」
卑怯だ、と激しく鳴り響く胸の鼓動が軋み声を上げる。 そんな言い方で彼女を繋ぎとめようとする自分の浅ましさに眩暈を覚える。 優しくしたい気持ち、傷つけたくない気持ちの裏側で。 何をするか分からない程の激しさで、彼女を求めている自分。 知らない。 こんな自分は、これまで、知らなかった。
「なつき……」
苦しそうに、悲しそうに、彼女が私の名前を呼ぶ。 強く戒めるように握り締めたその手首の細さに、胸が痛む。 でも、離せない。離したくない。
「……堪忍……」
今度こそ、彼女は。 面伏せ、肩を落として、静かに、涙を流していた。 色を失った頬に、傷跡のような軌跡が走る。
「うちの……せいや……堪忍……堪忍な……」 「……!」
何が。 何が彼女のせいだと、言うのか。 何処までも、何もかもを自分の背に負おうとするその姿を。 悲しむよりも早く、冷えかけた頭に再び一気に、血が集まる。
「静留……っ!」
叫んでも、叫んでも。 決して、届かない気がした。 辛くて、切なくて。 言葉にすら、ならなくなるほど、悲しくて。 きつく掴んだその手首に。 この手の痕が、いつまでも残れば良い。そんな事さえ。 酷く、苦しい胸の中、考えながら私は。 こんな自分を、今の今まで。 知らないままで居たいと願っていたのかと。 自分自身を激しく責め立てたい衝動に、駆られていた。
で。 若干の軌道修正を行った上で尚且つ。 何処へどう持っていくつもりなのかな、己ときたらば……(伏し目)。
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