一橋的雑記所

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2005年12月29日(木) だから出勤1時間前に顔も洗わず何をしているのかと小一時間(え)。※ホントは060731.追記あり(えー)。

時間制限30分。
スタート(何)。



ついてくるな、と吐き捨てられて。
向けられた背中をそれでも追い掛け続けてる。
何故とかどうしてとか問われても分かる筈もない。
ただ確かなのは。
今の自分の目にはあの子の姿しか。
見えていないという事実だけ。



BEGIN



昼休み、生徒会室での用を終え。
出来れば一人静かに昼食を摂れる場所をと中庭を横断していた時だった。
校舎沿いの並木の影を、いつものように脇目も振らず真っ直ぐに歩いている姿を見つけて思わず、頬を綻ばせる。

「なつきさん」

あの子が振り返った瞬間、良く透る、と評される声をこれまでで一番有難いと思った自分に気付いて微笑む。
あの子は、なんだ、と言いたげに一瞬形の良い眉を顰め。
それからふいっと顔を逸らしてしまったが、構わず駆け寄った。

「なんや、お久し振りどすなあ。今からお昼?」
「……お前には関係ない」

そっけなく言い返す前に置かれた躊躇いが愛しくて。
思わずこみ上げた笑いをそっと、奥歯で噛み殺す。

「嫌やわあ、そないにいけず、言わんと」
「い……?」

何だそれは、とばかりに真正直に振り返るその顔がまた可愛らしくて。
今度は流石に笑い声が漏れてしまった。

「わ、笑うな!」
「ああ、堪忍」

プライドが高くて、手負いの獣の様に警戒心が強くて。
それでいて、真っ直ぐで、自分の感情には酷く素直で。
近付けば近付くほど、目が離せなくなる。
つい先ほどまではあれだけ、一人になりたかった気持ちが嘘のように。
側に居たい、居て欲しいと思ってしまう。

「もしお昼まだどしたらご一緒させて頂こか、思いまして」
「……何?」

不意を突かれたような顔をしたあの子の手に購買の白い袋がある事にも。
その歩く勢いからそのままもしかしたら、校内を離れるつもりなのかもしれない事にも、とっくに気付いていたから、続ける。

「それとも、これから何かご用でも?」

瞬間、その顔一杯に広がった困惑を真っ直ぐに見つめていたら、あの子の唇が逡巡と共に引き結ばれた。
適当な事を言って、邪険に遠ざけたって構わないのに、そうしない、出来ない。
そんなあの子の心根が、何とも愛しく嬉しい。

「……変な奴だ」
「そうどすか?」

目を逸らし諦めたような溜息と共に歩き出したあの子の背中を追いながら、聞き返す。

「変だ。何でわざわざ私なんかに声を掛ける。他に幾らでも居るだろうに」
「あら、うちにとってなつきさんは、なんか、何かとちゃいますえ?」
「な……っ」

振り返りこそしなかったけれども、その横顔がみるみる赤くなって、その色が耳元まで達するのが見えた。
この子は、本当に何も知らないのだと思う。
自分がどれだけ、人の目と心を惹き付ける魅力を隠し持っているのかを。
その事が、嬉しいようなもどかしいような気がして。
気が付いたら、思ったままの言葉を口にしていた。

「逢えたら嬉しいし、出来れば一緒に居てたいなあ思うお人です」
「だから、それが変だと言うんだ!」

間髪入れず激しい言葉と共に足を止め振り返ったあの子を見た瞬間。
胸の奥が大きく波打った。
その顔に浮かぶ表情は、呆れるとか照れるとかではなく。
何処か怒りにも似た、激しいものだった。

「お前に私の何が分かる? 私の何を見てそんな事を簡単に口にする? 何のつもりで私に付きまとうんだ! 私は……!」

言い募りかけて、はっとした様に。
あの子は、口を噤み、面伏せた。

「なつきさん……」

強く唇を引き結んで、何かに耐えるようなあの子の顔には、後悔が見て取れた。
激情に我を忘れた事、それを人にぶつけてしまった事を悔いる色が。
先ほど見せた、荒れ狂う嵐そのもののような顔が嘘のようだった。
けれども、どちらもあの子の、真っ直ぐなあの子の心、そのままのようで。
酷く、胸が、痛んだ。
だから。

「……なつきさんは、優しい子ぉどすなあ」

波打つ胸の高まりを抑えこんで。
出来るだけ、静かに、語りかける。
驚いたように顔を上げたあの子は何処か、寄る辺を失った迷い子のような、それでいて、何処か老成した諦めのようなものの影をその面に滲ませていたから。
改めて、ゆっくりと、微笑み掛ける。

「確かにうちは、なつきさんの事、なぁんも知りません。けど、なつきさんの事、知りたいとは思うてます。見てたいと思うてます」

あの子の心の何処まで、この言葉、この笑顔は届くだろうか。
届いてしまうのだろうか。
自問する事で、自分の中の何かを制しながら続けた。

「うちは……なつきさんと友だちになりたいんどす。それだけや、あきませんのやろうか?」

胸の内に生まれたこの気持ちは、瞬く間に溢れそうだったけれども。
それ懸命に堪えて微笑を浮かべて。
少し怯えながら紡いだ言葉たちが、あの子の中に落ち着くのをじっと待つ。

「……やっぱりお前は、変な奴だ」

暫しの沈黙の後。
あの子はこわばっていた顔を緩めて吐き捨てるように言い放ったけれども。
その背けられた顔の頬辺りが、ほんのりと。
でも確かに、薄赤く染まっているのを認めて。
どうしようもなく、嬉しくなる。

「なら、うちとなつきさんは友だち、いう事でええんどすな?」
「……勝手にしろ」

返される言葉の勢いが、少しずつ弱くなっている。
その事が、もっともっと、嬉しくて。

「友だち、いう事やったら、名前、呼び捨てで呼んでもええ?」
「な……っておい……!」

わざと言葉遣いを変えた事に敏感に気付いたあの子が振り返るよりも早く。
その背中に背中に。
縋るように、そして決してこちらを振り向かせないように。
腕を回して耳元近くに、囁いた。

「勿論、うちの事も名前で呼んでくれはってええんよ?」

う、と詰まったあの子を軽く抱き締めた。
真っ直ぐで、傷つき易くて、大切なものを。
壊してしまわないように、包むように、優しく抱き締めた。

「うちとなつきは、友だちやねんから」
「わ、分かった、分かったから離れろ……っ!」


恐らく、人に触れられる事に馴れていないだろうあの子が。
居心地の悪さに身じろぎながら、でも。
振り払えないままに、この腕の中に納まっていてくれた。
その事に、嬉しいような切ないような気持ちを初めて抱いたこの日。


うちの恋は、始まった。





ぐっはあ!時間切れ!
後で直すかさくっと消すか全面的に書き直すかしたいと思います!では!






追記:
こしょこしょと書き直してみたり。
でもあんまし変わらなかったり……(伏し目)。

何がしたかったかのかは自分では分かっているんです、はい……。
てか、暫く全くこの手の文章書かない間に。
幾ら30分一発書きや言ふてもホンマに文章荒れ荒れで。
流石に凹みましたわ……(逸らし目涙)。

コレを下敷きに別の小話を書くか。
そりともコレを後もうちょっとこしょこしょ手直しして。
そのまんまどっかに晒すかはまた後で決めますです。

てか。
またもや己。
人様から預かった物を独占して作業してない事を思い出したり(え)。
ええとええと。

明日、時間、取れるかなあ……(遠い目)。


追記その2:
結局、結構色々書き足しました。
やっぱり静留さんは、切なくてナンボやなあと思ったとか。
そんなこと、ナイデスヨ……?(逸らし目)


一橋@胡乱。 |一言物申す!(メールフォーム)

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