文章を書くという事は、胸をえぐるのに似ている。
生きていて辛いと思うことや、幸せだと感じる事。 人につけられた小さなキズを、更に自分でえぐる。 きつく抱きしめられた胸の切なさを、更にきつく抱く事で 確認する。…色んな感情を、少しずつ、少しずつ、えぐり切って、 文にして吐き出して行く。文字と言葉は、胸を切るナイフだ。
ずっと黙って言わないで居ると、良い事も悪い事も、やがて 毒になって体を蝕んで行くから、だからこうして吐いて行く。 …膿が溜まらないように。心が汚れないように。
膿が溜まると、心に描く全ての色は、混じりあって、 いつも最後にはグレーになる。時には黄土色。やがて、黒。
だけど、色は鮮やかに、蒼は蒼に、紅は紅に。 そうあるべきだと気付くから、筆を洗う水を替えるように、 私はナイフで胸を切る。
思い出にしがみ付かないように。心が捕われないように。
毒が抜けて、自分の色に気付けたなら、 誰の色も、混じることなく、現実は、そのままの色で私に映る。
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