JERRY BEANS!!

2001年09月24日(月) 父の良いところ

私の父は、私が20になる年に亡くなった。
眠ったまま、逝って、帰らぬ人となった。

私は父が好きだった。
一度も私を怒った事のない、優しく甘い人だった。
兄には厳しい人だった。
私は中学1年から高校3年まで、事情があって父とは
別れて暮らしていたが、大学浪人したのをきっかけに、
実家に帰って父と兄と祖父母と暮らしていた。

小さな頃から父を尊敬していたし、大好きだったけど、
19の年に一緒に暮らして、初めて気付いた事がある。

父は、一日たりとも、挨拶を欠かした事が無いのである。
彼は、私が眠っていても、勉強していても、曲を聴いていても、
何をしていても、必ず「行って来ます」と「ただいま」を
言っていく。その頃、店の仕事もちょうど大きくなりかけていて、
ほとんど日付を変わらずには帰らない人だったけど、
それでも挨拶は一日も欠かさず、する人だった。

勿論、私にだけではない。一緒に暮らす人、全員のところへ
必ず挨拶をして行く。それが、父の良いところだと私は思う。

そのくせ、人生最後の時だけは、誰にも何にも言わずに
逝ってしまったのだから、何だか皮肉な話だけど、
本当は、色んな事から開放されて、一人でゆっくりしたかった
のかも知れない。いつも、ひとのことばっかり考えて、
自分の体の事などかえりみずに働く人だったから。

いつか、父が私に教えてくれた事がある。
人間にとって一番大事な事は、自分の側に居てくれる人を大切に
する事だと。…そう言ってた。家族と心を大切にしなさいって
あぐらをかきながら、そう言ってた。だけど、結局は、側に居ない
人の事まで、気にして、色んな所を駆け回ってた。彼は
死ぬほどお人好しで、説教好きで、世話焼きでおせっかい。
いつも余計な他人の悩み事を持ち帰ってきては一人で悩むような、
そういう男。私はそんな父がとても人間っぽくて好きだった。

惚れっぽくて騙されやすいのは、父親譲りの性格だ。
そんなところ、バカっぽくて笑えるけど、だから私は、後悔しない。
きっと、私や父親くらい、バカな人が、私を貰ってくれるだろうって、
そう思うから。


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nana [HOMEPAGE]

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