貴方を長いこと、表面的に知っていました。
間接的に、話を聞いたり、何かの情報を耳にする事はあった。 貴方を見たことも何度もあったけど、いつも、 貴方が絡ませる細い糸の膜や、薄氷のオブジェのような殻を、 危うくてとても怖いと、思っていました。
関わったら、多分、同じ質の闇を突つきだしてしまう気がして。
それに触れて胸が冷えるのには、全く覚悟も無かった。
貴方を始めて知ったのは、初めてふたりだけで話した日。 あんなに柔らかい表情の貴方を見たことがなかった。
貴方の闇が、あんなに温かい闇だと、初めて知りました。 ぬるく人肌の、血のような。固体と液体の交じり合った黒。 薄く白い表面も、中の黒が透けて綺麗。
もしもこれからもずっと一緒に居られるのなら、 私はあの日の前日の夜に、お休みなさいと挨拶した後の、 貴方の背中を忘れないようにしよう。
不思議な程に後ろ髪を引いた。何も話さずに歩く貴方の背中を。
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