JERRY BEANS!!

2004年11月27日(土) 徒歩のスピード

あの人が、だんだん遠くなって行く気がする。
…最近思い出すあの人は、いつも背中を向けていて、
ほんの少しだけ顔をこちらに向けながらも、目は他を見つめていて、

眼鏡越しに、こちらを見ない。あの人の目が細くて。


いつだったか、眼鏡を取った顔が見たいと言って断わられた。
…あの日は、眼鏡をつけた顔を、見る事が出来なかった。

今は、そのどちらも、見ることも出来なくて。
柔らかい髪が、根本から湿るのを、この指で触れることも出来ない。
やっぱり。こんなにも会えないなら、死んでいるのと同じ。

多分、私がこうして話すのを止めたとき、私の中のあの人は死ぬんでしょ?
今も、生きてはいないけれど。

本当は、遊び仲間の彼女としてなんかじゃなくて、ただ普通に出逢いたかった。
だけど、そうでなければ出逢う術などなくて。
きっと、世の中のどうでも良い人として、すれ違って居たのでしょう。

 ほんの一瞬、目が合ったのを、本当に上手にそらす人。
 とても賢い人。…とても冷たく優しい人。

 だけど本当に、芯から冷たい。…だから、好きになった。
 私のことを、決して好きになどならない人を。

頭の中で。…口をぱくぱくしながら私に何か言ってくれるけれど、
耳がもう聞こえないの。…眼鏡越しに、何かを見ているけれど、
その目が細すぎて、あの人が何を見ているのかも想像出来ない。
ただ、こちらを見ないのが解るだけで。ただ、遠くなる。

歩いていってしまう。


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nana [HOMEPAGE]

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