貴方の前に出ると私は罪人になる。
確かなものが何ひとつ無いなら、私は生きているだけでも 嘘の塊のようなもので。
愛されたいという嘘も、私が心の中に鍵をかけて閉じ込める嘘も、 本当は後ろ側からだだもれで。嘘にもならない。
貴方を想うと、その綺麗過ぎる目が哀しくなる。 例えば、命を弄んで暇を潰そうとする貴方の魚のようにね。
貴方は。純粋過ぎる。真実を近付け過ぎる。
貴方のそういう所に気付く度に、そうでは無いから気付けてしまう 自分の不純さを卑しく思う。なのに。…好き過ぎて。好き過ぎて。 退く事すら出来ない。私という「嘘」が。…哀しくて。哀しいのに。
胸は詰まるのに背中はがら空きな。…この貪欲な罪人は。 1度繋いだ貴方の手を、離すことも出来なくて。 ただ好きと繰り返すだけ。ありがとうと繰り返すだけ。
ごめんなさいとは、いくら言ってもきっと足りない。 いくら胸が嘘を繰り返しても、がら空きの背中が喋り続ける。 背中を押さえて。どうか。私が余計なお喋りをしないように。
本当は、背中だけでなく、胸にも真実を話させたい。喋りたいのに。 ちゃんと目を見て、電話で言うように。貴方に。照れずに。 こんなふうに思うのと、同じように。
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