夜が赤く染まる。電飾が散る。偽物の星が光る。ふと、通った道の途中で、あの人を想い出してふと、携帯を見た。もう消したアドレスもナンバーも、思い出せない。もう声も顔もその手の感触も、思い出さない。けど、いつも何かの拍子に、一瞬だけ胸を透く。夜風のようなその感覚。用の済んだ衛星みたい。無意味に軌道に沿う。チカチカする。電飾に瞬きをするような。振り返るほんの一瞬の時間。「 」言葉にならない。額を切るようなあの人の。