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ZS日記 「25時」-9・・・・・tako - 2003年05月23日(金)
明日の土曜日を、何週間ぶりかの休日にするためには、 どっさり仕事を持ち帰らなければならなかったが、仕方ない。 今夜頑張れば、なんとか片付くか……いや無理だな。 徹夜しても終わりそうにねぇ。
明日の日中の予定を確定にする為には、少なくともこの先二晩の徹夜は 覚悟しておいたほうが良さそうだ。 それでも月曜日の企画会議に間に合わせるのは至難の業…っぽい。
やらなきゃ終わんねぇ…。そう思い直してパソコンに向かう。
金曜の夜、深夜まで残業して帰宅。
帰り道のコンビニで買った弁当は手付かずのまま冷めていく。 そう、腹が減ってないわけじゃない。減ってたから、買ったんだ。 でも喰う気がしねぇ。 冷蔵庫からビールを出してきて2本、3本と空けながら、 キーボードを打つ。 点けっぱなしのテレビからはスポーツニュースが流れている。 キャスターの声も耳には入らないままデータを打ち込んでいる時、 インターフォンが鳴った。
こんな時間に?
人の家を訪問するには、いささか非常識な時間じゃねぇか? もうすぐ日付も変わろうとしている。 心当たりがないまま、インターフォンの受話器を取る。
「はい……」
「ゾロ? 俺…」
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ZS日記 「25時」-8・・・・・tako - 2003年05月21日(水)
新人を連れての挨拶回り。 得意先を一軒一軒まわり、ルフィの名前と顔を覚えてもらう。 いずれ俺は現場を離れ、コイツが後を引き継いでいく。 歳の割にあどけない外見と天性の明るさで、顧客の受けは悪くなさそうだ。 何十件とある得意先を、一日めいっぱいまわっても2週間はかかる。 夜になっても疲れを見せず、帰社後も俺と一緒に事務処理に追われる ルフィは、見ていても気持ちがいい。 そんな日が続いている。
一度会社を出たら昼間は不在の日々。 当然あれ以来、サンジの弁当にはありつけないまま。 あの時のサンジの瞳が忘れられない。 そしてあれから食に関する考えを、俺は少し改めた。 一食ぐらい…と言ったら、怒ったあいつ。 食えればいい、腹が満たされればいいと思っていた俺の食生活に、 あいつは殴り込みをかけた。 手間を掛け、心をこめて誰かのために作った(俺のためだ)料理が どんなに旨いか。
口にしたのはイモ一個。 でも、そう思わせるあいつは…。
また弁当を作ってくると言っていた。 それを真に受けて、涎を垂らさんばかりにしていたルフィ。 単なる大食いかと思ったが、あいつも「ただ食えればいい」派ではないらしい。
今日もかなり遅くなった。 帰りに一杯やりながら、軽くメシを喰う。 相変わらずの喰いっぷりのルフィを横目で見ながら、 俺の腹は酒で満たされていく。
サンジが見たら、やっぱり怒るんだろうな…
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ZS日記 「25時」-7・・・・・kisaragi - 2003年05月14日(水)
「一食くらい喰わなくても、死にやしねぇ」だと!?
このアホマリモは、一食を笑う者は、一食に泣くって言葉を知らねぇらしい・・・(俺のジジイの座右の銘だ) そもそも、人間らしい食事って、そういうもんじゃねぇだろう? 一食くらい抜いてもなんて思ってる時点で・・・・・しかも全然一食じゃねぇ・・・ 生活に余裕がなくなってるってことに、どうしてこいつは気が付かねぇ?
何か一言言ってやりたいのに、上手く言葉が見つからない。 部屋からでていこうとするゾロの袖口を掴んだまま、 空っぽの重箱に何も言えなくなる。
今朝、いつもより早く起きて、それはちっとも苦にならなくて、 きっと、なんだかんだと腹を空かせているに違いないゾロが、 がっつくのを横で見ながら、 「どうだ、クソうめぇだろう?仕方ねぇから、また作ってきてやるよ」 って言うつもりだった。
もともと誰かに飯を食ってもらうのが好きな俺だけど、 誰かの顔を思い浮かべて作るのは、また別の楽しさで・・・・・ なんでこんなことになっちまうんだよ・・・・・
ぎゅうっと唇を噛み締めたまま、ゾロの袖口を離せない。 口を開けば、仕方のないことを口走ってしまいそうだ。
「悪ぃ、サンジ。腹へってたんだ・・・・・お前の弁当、すげぇ美味そうで、 食ってみたら、ホントに旨くて、止めらんなかった」
見れば、叱られた仔犬のような顔をしたルフィがいる。 大雑把なようでいて、この新人は、実は人の心の動きを、 野生動物のように察知する。 恐らくは、ゾロと同様に、ルフィもまともに飯を食っていない。 そのことにようやく思い至った。 「旨かったか?」 「すっげぇ旨かった!!」 思いっきり、体全体で旨いと表現されれば、 もう、許す以外に何ができるというのだろう?
ゾロに喰ってもらいたかったけど・・・・・ 「じゃあ・・・・・また作ってきてやる、そのかわり、 人の分まで手ぇ出すなよ? おい!ゾロ、お前の分も作ってやっから喰え、いいな?」
言って徐に、自分の机まで引き摺って来て、 鞄の中から、夜食にと思っていたパンを出す。
「とりあえず、これでも喰っとけ」
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SS「薫楓」 Sサイド(という名の蛇足(笑))・・・・・kisaragi - 2003年05月13日(火)
木々の間を、爽やかな風が通り抜ける。
緑の中で、二人だけしかいないと、 まるで、時間から取り残されてしまったような気持ちになる。
遠い日に、この地にいた人たちは、同じ緑を見たのだろうか? ここで、誰かと笑い、喜び、嘆き、涙を流したのだろうか? 最後の時、別れゆく彼らに後悔はなかったのだろうか?
傍らの温もりに、大切な人がすぐ傍にいてくれる奇跡を思う。
これって、すごいことだろう?
日頃は、ちっとも意識しないけれど、 こいつと一緒に同じ時を歩むことができるって、 実はとてもすごいことなんだろう。
だから、日々の日常を、大切にしていこう。 一緒に笑って、時には喧嘩して、仲直りをして、 そういった全てのことを、大切に抱きしめていきたいと思う。
「薫楓」 了
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SS「薫楓」 -3・・・・・tako - 2003年05月07日(水)
最愛の妻と3人の姫を守り通した城主を思うのか、 ともに自害しようとして叶わなかった奥方の気持ちに想いを馳せているのか、 どちらにしても、時を経てこの同じ光景を見ていたかもしれない二人に シンクロしているであろうことは想像がつく。
「もう少し行くと頂上だ。どうする?」 「ん…、行くか。」
指に触れていた楓の新芽をもう一度愛しそうに撫で、振り向いた顔は 痛みと安堵が混ざったような、複雑な表情だった。
形はちがっても、俺たちがこうなる前には、いくつもの障害があったのは 確かなことで、今でもそうだが、コイツにはずっと辛い思いをさせてきた。 せめて不安を取り去ってやりたいと思うが、口下手な俺に上手い台詞は 浮かばない。
俺にできることは、同じ時を同じ視点で過ごす中で、共感、共鳴できる部分を 増やしていくことだけかもしれない。 小さな出来事の積み重ねが、俺たちの歴史を紡いでいくなら、 もっといろんな所に連れて行きたいし、一緒に笑ったり怒ったりしたいと思う。
頂上から城下を見下ろし、栄華の名残を足元に確かめながら、もと来た道を戻る。
楓の下でサンジの弁当に舌鼓を打ち、爽やかな五月の風を頬に受けながら ごろりと横になると、頭の上の楓の葉がさわさわと衣擦れの音を立てていた。 重なり合った葉の隙間から零れる初夏の日差しが、サンジの周りに 光を集め、輝いている。 目を閉じて風に髪を遊ばせ、白い頬を少し紅潮させている姿は、 少年のようでもあり、反面、俺には勿体無いぐらいの神々しさで 風景に溶け込んでいる。
触れてはいけないような気持ちになって、伸ばしかけた手を引っ込め、 傍にある存在に感謝しながら俺も瞼を閉じた。
「歴史小説なんかを読むと…」 「ん?」
「城が落ちたのは、夏の終わりだったらしい。」
「そうか。もっと深い……」
さやと吹く風に夕方の気配を感じるまで、そうして時間は過ぎていき、 俺たちの休日は終わった。
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SS「薫楓」 -2・・・・・tako - 2003年05月06日(火)
「なあ、どこ行くのか、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーの?」 米原JCTから北陸道に入る手前で、そう訊ねるサンジに、 「こっち」と言って車線変更。 言葉のわりに、声の感じはさほど不満そうでもない。 楽しみにしてたもんな、お前。 金の髪をくしゃっと混ぜ、「もうすぐだ」と告げる。
琵琶湖の近く、戦国時代に悲劇の舞台となったその古城址は、 小高い山の上にある。 尾根の高低差を生かして作った曲輪や野面積みの石垣が残っているだけで、 訊ねてくるのは古城マニアぐらいの、静かな場所。
本丸に続く石段を、かつてここを徒歩で、または馬で登城した武士を思いながら 歩いていくと、突然目の前に開けるだだっ広い空間、 「大広間」とよばれる、この城最大の面積をもつ郭跡に出る。
千畳敷とも言われるこの郭跡には数え切れない楓の木が乱立している。 深い緑、明るい緑、日ざしを浴び、重なり合って影になり、 漣のように押し寄せる碧のうねり。 足元の草叢とは違う碧の洪水が、ちっぽけな人間を飲み込むように迫って来る。 俺なんかよりは遥かにロマンチストなサンジは、 予想もしていなかった風景に息を呑んで立ち尽くしている。
来る途中、戦乱の時代に引き裂かれた、城主と奥方の悲恋を話してきた。 サンジなりに感ずるところもあるのだろう。 ポツリと零した言葉は、
「落城の時、ここのもみじは赤かったのかな?それとも今みたいに…」
to be continued.....
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SS「薫楓」 -1・・・・・tako - 2003年05月05日(月)
GW最後の日。 好天続きの連休だったが、まさに五月晴れの蒼い空。 少なくなったとは言え、何時の世も変わらぬ親の願いを乗せて泳ぐ コイノボリ。 国道沿いのツツジは透き通ったピンクや白の花を誇らしげに太陽に捧げ、 延々と花の絨毯を繰り広げている。
Uターンラッシュを見越して、早朝に出発した約束のドライブ。 まだ明けきらないうちから起き出し、手の込んだ弁当を作っていた サンジは、早くも眠そうだ。 「高速も任せろ!」って息巻いていたお前はどこ行っちまったんだよ? 窓に移り変わる景色を眺めてふんにゃりしているお前。 その手に触れて覚醒させると、瞳の蒼を一瞬大きく開き、また細めて 「なに?」と小首を傾げる。 だから、その顔は反則だっつーの。 また天下の公道でキスしたくなるじゃねーか…
弁当の中身は何だろ? お前が作るものは何でも美味いが、旬の素材の持ち味を活かすのが 得意だから、俺の好きそうな春の食材がいっぱい詰まってるんだろうな。 食べ物に無頓着な俺が、ガラにも無く弁当の中身を気にしてるあたり、 やはり俺も、お前に負けず劣らず浮かれてるんだろうな。 やべぇ…景色と同化して透き通るような横顔を見つめていたら… 弁当じゃなくて、他のものが喰いたくなってきた(苦笑)
「ゾ〜ロ?余所見してっと危ねーぞ。」
ちっ!知ってたのか。
to be continued.....
* * * * * *
※スミマセン(>_<)ゞ 「25時」の途中ですが、割り込みSSを アップしちゃいました。暫くお付き合い下さいませ。 終了後、すぐに「25時」を再開する予定です。 by tako
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ZS日記 「25時」-6・・・・・tako - 2003年05月04日(日)
口に放り込まれたものは… サトイモの煮っころがしらしい。 うす味でダシが効いてて、上手く言えねぇが… あまり行ったことはない、高級料亭の味がした。
無理矢理座らされたし、正直な所、腹も減っていたので、 何故だか分からないがサンジの好意に甘えようと決め、 それじゃ、と五段重を覗いたら…見事に何も残ってねぇ。 そして満足顔のルフィ。 おま…全部喰ったのかよ?
そしてサンジが顔を真っ赤にして怒鳴っている。 そりゃ、そうだ。いくらアイツがお人好しだって言っても、 テメェの分もあったんだろうに。 全部ルフィに喰われちゃ、そりゃ怒るのも無理はねぇ。
これ以上座っていても仕方ないので、ありがとよ…と サンジの肩をぽんと叩いて席を離れる。 さっきの資料を抱えなおして、今度こそ部屋を出ると、 サンジが追いかけてきて言った。
「お前、ちゃんとメシ喰ってんのかよ?」
なんでお前にそんなこと心配されなきゃなんねんだ?
「一食ぐらい喰わなくても、死にやしねえよ」
適当に茶化してエレベーターに乗り込もうとしたら、 なおも食い下がって俺のスーツの袖口を掴んだまま、 じっと見つめてくる。 キャンキャン煩いのも困るが、黙られると…もっと困る。 何か言いかけて、それっきり黙っちまったサンジ。
俺、会議の準備が…あるんだけどな?
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ZS日記 「25時」-5・・・・・tako - 2003年05月03日(土)
ルフィとサンジが、騒いでる。 ああ、もう昼なのか。 でっけぇ弁当だな、ありゃ… サンジのやつ、ルフィに作ってきてやったのか? アイツの胃袋は半端じゃねぇからな。 それであんな、でけぇ…(笑)
午後からの会議の準備で、昼メシにありつけるかどうか 微妙な線だったが、どうやら無理っぽい。 お気楽に騒ぐ奴等を尻目に、資料を抱えて席を立つ。 部屋を出ようとした時、サンジに掴まった。
「どこいくんだよ?」 「あ? 会議室。」 「メシは?」 「喰ってるヒマがねぇ。」
「……… 喰え!」
首根っこ掴まれてサンジの椅子に座らされ、口に何か放り込まれた。
(旨い…)
そして、見れば俺の口に入るものは、もう何も残っていなかった。 ルフィ……
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