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ZS日記 「 海 」-番外編・・・・・tako - 2003年08月15日(金)

「盂蘭盆会」

花屋の店先に並ぶ、とりどりの色の片隅、
大きな葉の陰に、赤い小さな紙風船。
少し破れて、中から丸い実が覗いている。
「これも…ね」
「一緒にたのむ」
レジの前に置かれた何種類かの花と一緒にそれは束ねられ、
金を払った俺たちは店を後にした。


「この暑さじゃお花も一日しか持たないわね。可哀想だけど…」
持ってきた花を切り揃え、手桶の水で満たした花立てに活けながら
小さな溜息を落とすナミ。
黙って掃除を手伝っていた海も、「そうだね。」と呟いた。
「でもお母さん、お花好きだったから…」
海の言葉の中の、戸惑いの色に気付いたナミは、
「海はやさしいね。」と言ってにっこり笑い、白い竜胆を手渡した。

暫く考えていた海は、ホオズキの横にそれを挿し込み、
やがて跪くと、小さな手を合わせて祈った。

幼い息子を残して逝った女性(ひと)の眠る場所を、
季節ごとに3人で訪れるようになって、もう何年…
薄れていく記憶の中で、
やはりその人は海にとって大事な母であり、
俺たちにとっても大事な人に変わりはなく…


短かった夏の終わりを告げる涼風が、
ホオズキの風船を一つ揺らして、通り過ぎた。






了






※連載の途中で脱線してしまいました。ごめんなさい。
 次回からは本編に戻ります。


-

ZS日記 「 海 」-6・・・・・tako - 2003年08月14日(木)

どうもおかしい。
いくら俺が鈍いと言っても(自分で言うのもなんだが…)
サンジに避けられてるような気がするのは、どうやら「気」ではなく、
アイツはマジで俺と接点を持たないようにしているようだ。
同じフロアで働いてて、1週間、顔を合わせないなんてことは、
意図的でもなければ、ありえない事だから。

以前はよく下らない事で衝突したり、ジャレあったりしてたのに…
栄養バランスだ、弁当だと騒いでいたくせに…
その弁当も最近はルフィの胃袋に収まるのみ。
ルフィは喜んでいるようだから、それを咎めるつもりも権利も無く。
そして俺もサンジも、許容量以上の仕事を抱えている。
余所見をしている余裕など、これっぽっちもないのだが…
どうやら嫌われちまったようだ。

あの春の日、一度だけ触れた口びるの感触を、俺は全然忘れていないのに。






そんな日が続くうち、やがて長かった梅雨も明け、
セミ時雨の煩い季節がやって来た。

なんとか仕事に区切りをつけ、夏期休暇も確保できた。
海<かい>と約束していた水族館にも、地元の夏祭りにも行けそうだ。

そして海との最初の約束は、子ども部屋の模様替え。
賃貸マンションでは壁のクロスまでは変えられないが、
カーテンとベッドカバーを買いに、郊外のショッピングセンターに出かけた。
大型家具、電化製品から食品まで、欲しい物は殆ど揃ってしまうこの店は、
海にとっては遊園地のように楽しいらしく、また面倒くさがりの俺にとっても、
用事が一ヶ所で済むのはありがたく、休みの時にたまに利用している。

インテリアコーナーで恐竜の柄と車の柄のカーテンを交互に見つめ、考え込んでいる海に
「ベッドカバーを見てくるな」と声を掛け、視界の悪いコーナーを曲がった時、
反対の角から歩いてきた奴とぶつかりそうになって、慌ててそいつの腕を取った。

「失礼…っ」

「サンジ…?」



「とうさぁん、イルカの柄にしようかなぁ?」
3つのパッケージを抱えた海が、こちらを向いた。



「とう…さん…??」



-

ZS日記 「 海 」-5・・・・・kisaragi - 2003年08月05日(火)

近くて遠い場所がある。

本当は、その場所に居たくって、大切で大切で仕方がない場所。
やっと自分の場所が出来たと思っていたけれど、
どうやらそれは思い違いだったことにやっと気が付いた。

気が付いてしまった以上、もうその場所にはいられない。

お節介にも弁当なんて作ったりして・・・・・
どうせ喰うなら、こんな野郎の作った弁当なんかより、
綺麗な恋人の作った物の方が、どんなにか嬉しかっただろうに、
嫌な顔一つ見せなかったあいつと、直ぐ近くにいたナミさんを、
知らずに俺は、どれほど傷つけてきたのだろう。

俺って邪魔者じゃん・・・・・

ぼそりと小さく零れた自分の声が突き刺さる。
自嘲の笑みを浮かべた顔は、きっと酷い表情をしてる。
こんな顔、誰にも見せらんねぇ。

得意先周りを口実に、極力仕事を外に組む。
まだ、近くて遠い場所を直視するのは辛いから・・・・・
いつかきっと、もう少し穏やかに二人を見て笑えるように。
笑ってゾロに、「羨ましいぜクソヤロウ!」と言えるように。


極力ゾロとは接触しない。
絶対に、ゾロと二人きりにはならない。


つい作りすぎる弁当が、餌付けされたルフィの腹に消えていく。
「サンジ〜・・・・・お前のメシ、すっげぇ美味いけど・・・・・・
前の方がもっと美味かった気がするぞ?」

ルフィの舌は正直で、真っ直ぐな瞳に、無理をするなと言われた気がした。



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