朝から爽やかな青空。ひんやりとした空気に過ぎた季節を思い出す。 陽がゆっくりと昇り始めると風が・・きらきらと光って見える。 ああ・・春なんだなと思う。深呼吸する心とからだ。溢れんばかりの陽射しに感謝。
窓を開け放してお掃除をする。今日は気が向いたのでちょっと四角く張り切ってみた。 夫君が喫茶店に行っているまに茶の間も。ここは・・もう彼の部屋と化している。 炬燵の上にはゲームソフトが散乱。ソファーの下にはビールの空き缶が転がっていたり。 くすくすと可笑しくなる。まるで・・イチバン上のお兄ちゃんの部屋みたい。
家事が一段落してから川仕事に出掛けた。今日はお兄ちゃんが手伝ってくれるって。 そりゃそうでしょ・・こんないいお天気に・・炬燵でゲームなんて信じられない。 やっと一緒に行ってくれるんだとすごく嬉しかった。うきうき気分で川へと向かう。
実はもう・・川海苔漁も大詰めだった。今月中に漁場を片付けないといけない。 不作とはいえまだまだ海苔が残っていたので、ちょっと焦る気持ちもあった。 ひとりよりふたり。猫の手も兄の手も借りたい思いだったから・・・。
向かい合って手を動かしているとちょっと恥ずかしいような。照れるな・・って感じ。 いつもは一人で黙々と手を動かしているけど、今日はどうしてもおしゃべりになる。 あれこれ話し掛けては返事を楽しんだり。終いには「もう・・煩いぞ!」と笑われる始末。
春の潮はすごく早く引く。どんどん川の水が引いて行ってしまう。 あう・・有明海のムツゴロウみたいになっちゃったふたり。 仕方なく作業終了。今日はもちろんいつもの二倍の収獲だった。兄の手はこんなにありがたい。
思い荷をトラックに積むのも全部やってくれた。でも・・ちょっと腰が痛そう。 「だいじょうぶ?」と猫なで声の私は・・すごい楽チンで嬉しいのだけど。
お昼ご飯は後まわしにして作業場で仕上げの作業。お兄ちゃんがジョージアを奢ってくれた。 冷たい缶コーヒーをビールみたいに飲む。とっくにお昼を過ぎているのに空腹感が消えてた。 私が機械で海苔を洗い、お兄ちゃんが片っぱしそれを干してくれる。 陽射しが暑いくらいに降り注いでいる干し場。緑の海苔がキラキラと光って嬉しい。
やっと作業が終了したら・・もう午後2時になっていた。 「腹減った〜」と叫ぶお兄ちゃん。私のお腹もぐうぐう鳴っていた。
で・・まっしぐらに家に帰るはずだったんだけど、すぐ近くの従兄弟の作業場にいい物があるらしい。 ちょっと貰って帰ろう!と言い出して寄り道することになった。
それは“タラの芽”なんでも山菜の王様だとか言われてる珍味だった。 この前少し頂いて天麩羅にしてご馳走になってた。すごく美味しいものだった。 その“タラの芽”が従兄弟の作業場の裏にあって、ちょうど採り頃になっていたので。
近づいてみてすごいびっくり。だって・・それはトゲだらけの高い木だった。 私はてっきり地面からニョキニョキ出てるもんだと思ってた。 そのトゲトゲの枝の先にいっぱい芽が出てる。緑の新芽・・まさにそれは木だった。
全部採っても良いよと言ってもらって張り切るお兄ちゃん。 なんでも採っても採っても出て来るそうな。木も芽を千切られたらたまらないからね。 なんとしても緑いっぱいになりたい木。でも・・食べちゃってごめんなさいだよね。
おかげで今夜も美味しい夕食。
私はこんなささやかな幸せに酔いしれていたりする。
お兄ちゃん今日はほんとにありがとう
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