昼休みに弟から電話があった。実父の様子がどうもおかしいと言うので・・ ががんと不吉な予感が襲って来る。あれこれと悪いことばかり考えてしまう。 ここしばらくのあいだにひどく痩せていたそうだ。いつもの元気がなくて心配だと 弟が言うのだった。「今夜にでも電話してやってくれないか」と。
そうね・・今夜必ずする。私は・・本を読んでいた。すぐにまた夢中になって読む。 こういうところは薄情者。ほんとは心配なんだけど・・忘れたふりをしたりして。
とうとう昼休みが終る直前に電話をしてみる。留守だった。 そうそう・・父はいつも昼間は出歩いているひとで。居ないのが当たり前だから。 なんだ・・元気なんだ。居ないってことは元気な証拠じゃんと思う。
「みかです。変わりない?ちょっと電話してみました」と声を残しておいた。
で・・それからまた忘れていた。仕事が切羽詰ってしまってそれどころじゃなくて。 時々・・ふっと思い出した。銀行で順番をじっと待って居る時とか・・。
帰宅途中携帯がなる。父からだった。急いでクルマを停めて話す。 「どうした?何かあったか?」と言う。それは私のセリフじゃんお父ちゃん。
とても元気そうな声だった。「ちょっと断食しとってな」と笑っている。 断食って?そんなバカなと思ったけど、うんうんとう頷いてしまう。 何日間か知らないけど牛乳だけで過ごしているそうな。あんまりだよお父ちゃん。
「心配ないよ ありがとな」そう言って切れた。父の声が・・ぷつりと切れた。 痩せているだなんてわかりっこないよ。顔が見えないのだから・・何も見えない。
夜になり今度は弟に電話する。元気そうだったよとしか言えないけど。 でも・・弟は力を込めて言い続ける。「絶対におかしいんだ!」と。 見えないのはもちろん、もう10年以上も会っていないから・・姉ちゃんには分からない。 なんという親不孝であろうか・・情けない気持ちでいっぱいになった。
近いうちに会いに行くからと弟と約束をした。 今まで・・何度この約束をしたのだろう。父との約束さえ果たしていないのに。 いつかきっと手遅れになるからと自分を責めたくもなる。
「せめて度々電話ぐらいしてやれよ」と弟が言う。分かった・・ちゃんとするから。 でも・・またきっと「大丈夫や!」って言うよお父ちゃん。
見えないのじゃなかった。会えないのじゃなかった。
私が・・会いに行こうとしないだけなのだった・・・。
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